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目覚め2 side 寛人
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「お前またすごい子をみつけたな」
俺からの連絡に二つ返事で来てくれた幼馴染、新矢(あらや)は呆れたように小さく眠る少年を見下ろした。痛々しい体を必死に縮こまらせるようにして眠っている少年をそっとベッドに戻してため息をつく。
「やっぱりパニックになるよなぁ…」
「これ、持ってきておいてよかったね」
新矢は苦笑いを浮かべながら錠剤状のものを自分の口に放り込む。
下手に薬を飲ませることもできないからと新矢が持ってきたのは丸い形をした、なじみのある駄菓子のラムネだった。少年は無意識にそれを薬だと思い込んで気絶するように眠ってしまった。
心は痛んだが、これ以上暴れるよりは気絶であろうとましだっただろう。
「そろそろ救急車くるよね?」
「ああ、もう来るはず」
言いながら外を見やれば、赤く点灯した車が近づいてくる。この時間だからサイレンは鳴らされていない。きっとサイレンの音がしたらこの子は起きてしまうだろうからありがたい配慮だった。
招き入れた救急隊員は、一瞬俺たちを戸惑ったように見た。どこかで見たことのある顔だったが正直まだ頭に酔いが残っていたのか、思い出せない。
「倒れていたという方は?」
若い隊員の声にベッドの方を案内すれば、隊員たちが眉をひそめたのを感じる。
「…何時ごろに見つけたんですか?」
「20分ほど前。応急手当しながら救急車を呼んだりしてた。」
「ずっと寝ている?」
「いや、さっきちょっと起きたよ。パニックになって少し危なかったからもう一回休んでもらってる」
淡々と質問に答えながら、隊員たちの素早い対応をじっと見守る。傷だらけの体のどこに触れたら一番痛まないだろうか、そんなことを考えるようにそっと体が担架に移される。
少年は体をきつくこわばらせたが、目を覚ます様子はなかった。
「この子は知らない子なんですか?」
「うん、階段の下の裏のところに放置されてた」
「事情を聴かれると思います。今から…一緒に来ていただくことは…」
「かまわないけど」
もともとそのつもりだった。必要と思われるものだけ適当にカバンに放り込んで上着を着なおす。
ちらっと新矢を見ると新矢はふわっと眠そうにあくびをした。
「俺は寛人に言われて様子を見に来ただけだからねぇ。ちょっと一人で留守番させておくには心配な子もいるし悪いけど先に帰るね?」
隊員はなぜか目を丸くしたものの、俺に確認を求めるように視線を投げてくる。そうだ、とうなづくと隊員は新矢の連絡先などを確認したのちに新矢を解放した。
「ありがとうな、新矢」
「んー気にしないで、困ったときはお互い様だよ」
「…湊くんにもよろしくな」
すこしトーンを落としてそういえば、新矢は困ったように笑顔を浮かべる。
湊くんは新矢とともに暮らしている子で、彼もまたこの少年のようにけがを負って俺たちの前に現れた。
違うのは、そのときに彼を拾ったのは新矢で、今も世話をしているのは新矢という点だ。
まだ一人で眠ることを怖がる彼をおいてまでここに来てくれたのは、きっと湊くんとであったころのことを思い出してのことだろう。
「最近は湊も落ち着いてるんだ、こっちも落ち着いたらまた遊びに来てね」
その言葉にもちろん、と返して新矢と別れる。
救急車に一緒に乗せてもらうと、いくつかの器具が取り付けられた少年の姿が目に飛び込んでくる。…この子も湊のようにすこしずつよくなっていければいい。
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