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tears【涙】
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「よおおおし!今日と明日の二日間で絶対に百部売る!絶対!絶対だからね!雨谷君、多田君、頼んだよ!」
蓮華先輩の張り切った声が部屋中に響き渡ったことによって、部員全員が「うわ、どうしよう」というような顔をした。
「今年は何たって大学きっての有名人、多田君を見方につけている!つまり私達に怖いものは何もない!文芸部の名を皆に知らしめるチャンスなんだよ…!来年沢山の新入生に入部してもらうためにも、気合い入れて頑張ろう…!」
「よしっ!」と彼女は言いながら出来上がったばかりの文芸誌を手に取った。部員達が力を総動員して作り上げた文芸誌は、昨日やっと刷り終わったのだ。
「ほら、雨谷君もイケメン客引き組として頑張って貰うんだからね?まさか学園祭とかクソめんどくせえな、とか考えてたんじゃないでしょうねえ…」
「…思ってないですよ、そんなことは」
学園祭。
いくら事前準備が大変だろうが締め切りや推敲で徹夜続きになるとしても、面倒臭いとは思っていない。ただ、あまりにも蓮華先輩の気合いが入りすぎていて、その異様なテンションに着いていけないだけだ。
……一つ突っこんでいいだろうか。
去年はこんなに気合い入ってなかったじゃねえか!
記憶を辿ると、去年の学園祭は刷った文芸誌の部数だって少なかったし、「学園祭をそれなりに楽しめればいいよね」という感じだった。
それが何で今年はこんなことになっているんだか。
文芸部が学園祭でカフェを運営するのは昨年同様だけど、その衣装から細部に至るまでやたら気合いが入っている。あのまったりでゆったりなムードはどこにいってしまったんだ?
「雨谷君と多田君にはギャルソンの格好をして客引きに行ってもらいます!じゃんじゃんお客さんを連れてきてください!」
ビシッと顔を指差しながらそう言われた俺と多田は、お互いに顔を見合わせて「…はあ」と困り果てた呟きを零した。
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