アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7
-
常葉が見てなくてよかった。
息吹は今、人に見せられないほど絶望している。
「形って、そんなに、大事?」
「少なくとも、私にとっては。不快にさせたならごめんなさい」
「いや……。思うのは、常葉さんの自由だから」
「そうね」
常葉が大きく息を吐く。
「姉はね、結婚して4年もせずに死んじゃって。甥も姪もね、姉のこと、あんまり知らないんだけど……。義理の兄がね、とても大事に育ててて。再婚せずに、ずっと。お見合いだったの。姉も義兄もね。だから、その……死んでも、愛されるんだなあって……もう私、何言ってるんだろ」
困ったように笑う常葉を見て、息吹は些か安堵した。
自分の決断は間違ってはいなかった。
やっぱり、子どもを残せたほうがいい。
「じゃあ、その、お姉様がお子さんを残さずに亡くなられたら、夫婦ではなかったんですかね」
「うーん。さっきの言い方だと誤解されちゃうけど」
意地悪な息吹の質問に対して、常葉はさらりと笑う。
「結婚したから夫婦になるわけじゃないと思うの。一緒に時間を過ごして、そして相手がいなくても、ふと、思い出すような感じ。矛盾してるけど、形には残らないと思う」
息吹は明確な答えが欲しいけれど、それこそ夫婦の数だけ、答えがあるのだろう。
ならば息吹は受け入れなくてはならない。
矛盾があってもいいという選択肢を。
「すべてが、理路整然と片付くわけがない」
「そうね」
「常葉さんの矛盾は綺麗だ」
驚いたように常葉が瞬きをする。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 40