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「痛むか?」
「大丈夫です」
「繭には絶対手を出すなよ」
「わかりました、しかし何故ですか?」
「どうしてもだ、また同じ事をされるぞ」
「・・・・・・・・・」
包帯を巻き、ベッドに腰掛けた
「和海はどこまでの記憶があるんだ?」
「どこまで・・・」
「俺や繭達の事はわかってるんだろ?」
「はい」
「じゃ、他の事は?」
「他の事・・・・・・」
「何でもいい」
「思い出せません」
「そうか」
和海は嘘をついている
記憶から消えていない事がある
そんな気がした
「冬矢」
「何だ」
「・・・・・いえ、何でもありません」
「そうか」
「はい」
「俺はお前の兄でもある、だから何でも話して欲しい・・・何でも」
「何でも・・・・・」
「ああ、俺に出来る事があれば何でもしてやる」
「無理です」
「話もしないうちから無理だと言うのか」
「話をすれば私の事を汚いと思えるから」
「思わないよ、お前はお前だ」
「私達は、本当の兄弟で父親も間違いありませんよね?」
「ああ」
やはり、覚えている
それほど和海にとってショックな事だったのだろう
「大丈夫だ、俺には何でも言ってくれ」
「冬矢・・・私はっ・・・」
俯きながら全てを話した和海
やはり、殺して正解だった
和海はずっと一人で耐えていたのか
父親だから誰にも言えずに辛い思いをして来たのか
「安心しろ、お前を泣かせる奴はもういない」
「えっ?」
「あいつは死んだ」
「いつですか?」
「お前が入院している時だ」
「・・・・・・・・・・」
「だからもう何も思い出さなくていい」
「冬矢」
「俺が居る、お前を護ってやるから安心しろ」
「はい」
もしかして俺は取り返しのつかない事を言ってしまったのか?
燕羽はどうするんだ
しかし、俺は和海の兄だ
何も出来なかったダメな兄
「あいつの会社は?」
「それは何とかなっているからお前は気にしなくてもいい」
「わかりました」
「それと、本来なら卒業だが入院が長かったから留年したぞ」
「仕方がありません」
「もう一年学生が出来るな」
「ええ」
「俺もだけどね」
「冬矢もですか?」
「ずっと傍にいたし」
「すみません」
「気にするな、当たり前だろ?」
「・・・・・・・・・・・」
こんなに弱々しい和海なんて見た事が無かった
「痛み止めも飲んでおけ」
「はい」
用心深いはずの和海が素直に薬を飲んだ
もう、このまま記憶が戻らなければいいのに
「繭が生徒会長なのですね」
「去年までは和海だった」
「信じられません」
「そうか」
保健室の帰り、和海なら見覚えのあるウサギ小屋の前を通った
「音楽堂があるのですね」
「ああ」
和海の表情は変わらなかった
あれほど大事にしていたウサギ小屋を忘れてしまうなんてね
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