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生徒会室で仕事をしていると、突然燕羽の声が聞えた
「えっ?」
「翔、どうしました?」
「今、燕羽の声が聞えた気がした」
「燕羽ですか?」
嫌な胸騒ぎがする
「繭、ごめん」
「わかりました」
生徒会室を飛び出して、寮に向かった
「靴が無い・・・まだ学園に?」
もう一度学園に戻り捜したけどどこにもいなかった
「どこに行ったんだ?」
乗馬クラブに向かい、馬に乗って燕羽を捜した
馬を走らせ、裏山に向かう途中冬矢と和海が歩いていたような気がした
「いるわけないよな」
その時、声を掛けられた
「あの!」
「何だ、急いでるんだけど」
「燕羽君を捜してるのかと」
「知ってるの?どこへいるんだ」
「あまり評判のよくない人と歩いていて」
「誰だそいつ」
「3年の都築君」
「どこへ向かった?」
「塔の方へ歩いて行きました」
「わかった、ありがとう」
「いえ」
どうして知らない奴に着いて行ったりしたんだ
あいつは馬鹿でも、知らない奴には警戒心が強いはず
「あれは」
塔の下に誰かが倒れている
急いで馬を飛ばし、名前を呼んだ
「燕羽、お前なのか!」
だけど、全く動く気配がない
馬から飛び降りて、近付いた
「燕羽!おい、お前・・・起きろ、燕羽!」
だけど、燕羽は起きなかった
抱きしめたのに俺に手を回す事無く、人形のように腕はぶらんと下に落ちた
携帯を取り出し、繭に伝えるとすぐにヘリがやって来た
燕羽を抱き上げて、ヘリに乗り込み病院に向かった
「翔」
「一体誰がこんな事を・・・燕羽、お前なんでそんな顔してんだよ」
決して、安らかでは無い顔
誰かを憎んでいるような表情をしていた
「落ち着いて」
「落ち着けるか!こんな燕羽を見て落ち着け?ふざけるなよ!」
「ごめん」
そして病院に着いたが、燕羽は二度と目を開く事は無かった
そう・・・
燕羽はもういない
つい、数時間前に笑顔で話しかけて来た燕羽は
冷たいままだった
「繭、連れて帰るぞ」
「どこへ?」
「俺の別荘」
「わかった」
氷龍がヘリの前で待っていた
俺は燕羽を抱き上げたまま、無言でヘリに乗り込んだ
「おい、いい加減目を覚ませよ」
「燕羽、一緒に行く約束をしただろ?花の王国へさ・・・もう忘れたのかよ・・・・馬鹿野郎」
「俺を一人にするなよ・・・俺の名前を呼んでくれよ」
不思議と、涙は出なかった
それはまだ、死を受け入れられないから
「翔、着いたぞ」
「温室に行く、二人だけにして欲しい」
「わかった、僕達は別荘にいるから」
「ああ」
温室に向かい、花の上にそっと寝かせた
「ごめんな、花の王国には程遠いけどこれで我慢な」
顔や体についた血を、綺麗に拭きとり
一番似合いそうなシルクの白い服を着せた
髪を綺麗にとかし、唇にはピンク色のリップを塗った
体の上に、ユリの花束をそっと置き髪を撫で続けた
「仇は必ず取ってやるからな・・・そしたらお前のいる場所に行くから待ってろよ」
これから幸せになれるはずだったのに
どうして燕羽がこんな目に遭うんだ
死体が劣化しないように、温室の温度を下げた
燕羽の横に添い寝して横顔を見つめた
今にも、おはよう!って目を覚ましそうなのにね
さすがに今回は精神的にもきついな
こんなにも辛いなんて
「そうだ、今美味しいお茶を持って来てやるからな」
燕羽が好きだったお茶を淹れて、テーブルの上に置いた
「冷めるぞ」
「燕羽、早く飲めよ」
「燕羽・・・・・・・燕羽っ!!」
「どうしてっ!!」
そして今度は涙が止まらなかった
思い出すのは楽しい思い出ばかりで
気が狂いそうだった
もう二度と、燕羽の笑顔は見れない
弾む様な声も聞けない
拗ねた顔も、怒った顔も・・・・・・
二度と、見る事は出来ないんだ
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