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楓に連絡をして、ライブには行けないと伝えた
楓は大事だけど、今は翔の傍に居なければいけないような気がしたから
「氷龍は学園に戻り、燕羽の事を探って来て」
「ああ」
「僕はここにいる、翔が戻るまで」
「そうしてやれ」
氷龍が出て行った後、温室を見つめた
僕だって悲しい
友達を失ったんだ
でも、翔の方が何十倍も悲しいはず
恋人を失ったんだから
せっかく翔が幸せを掴もうとしたのに
絶対に許す事は出来ない
その時、力なく翔が戻って来た
「翔」
「繭、手伝って」
「うん」
何をするつもりなんだろう
倉庫から灯油を積んでいた
「翔」
「行くぞ」
車に乗り、温室へ向かった
翔は声を出すのがやっとみたいで、とても辛そうな顔をしていた
「あのさ」
「うん」
「俺、燕羽を棺に入れるなんて出来ない」
「うん」
「だからあいつが好きだったこの温室を棺にする」
「翔はいいの?大切に育ててた」
「燕羽より大切な物なんか無いだろ?」
「そうだね」
「本当は、あいつを焼くなんて嫌だ・・・だけどこのままじゃ天国にも行けないだろ?」
「うん」
「温室の周りに灯油を」
「わかった」
僕達は、温室の周りに灯油をかけた
翔は温室の窓を割っていた
窓が割れる度に、翔の悲しみが伝わる
胸が苦しい程の悲しみだった
「燕羽、ごめんな」
そう言って、温室に火を放った
勢いよく燃えだした温室
そんな温室が燃えてなくなるまで、黙って二人で見つめていた
「燕羽はどうするの?」
「あいつはあのままでいい」
「わかった」
「俺に、あいつの骨なんか拾えないよ」
「うん」
その気持ちも十分わかる
お墓に納骨するだけが弔いでは無い
「思い出の花の種を撒くよ」
「思い出?」
「うん、レンゲの種をたくさん撒いて、レンゲ畑にする」
「いいと思う」
普通に会話しているけど、翔は辛そうだった
翔の記憶から燕羽の存在が思い出に変わるまでにはどれぐらいの月日が必要なんだろう
僕だって、楓が撃たれた時は凄く悲しかったし、辛かった
でも、楓は助かった
だけど、翔は・・・・・
「翔」
「うん」
「燕羽の後を追ったりしないよね?」
「今は、燕羽を殺した奴を捜す事しか考えていない」
「うん」
いずれ、犯人は見つかる
翔はその犯人を殺すだろう
復讐を終えたらその後は?
もう一度同じ質問をするのが怖かった
翔の答えが僕の考えと一致しそうで何も言えなかった
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