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僕達は、翔の島へ来ていた
ここには燕羽が眠っていた
氷龍は何も言葉を発しなかった
それ程辛いと言う事だろう
雨に濡れた翔の体を拭いて、一番似合う服に着替えさせた
百合の細工が施してある棺の中に寝かせ、百合の花で埋め尽くした
笑っている翔は、本当に天使みたいだった
「これもいいかな?」
「もちろん」
楓はダリアの花を一輪、棺の中に入れた
白い百合と、赤いダリア
そして、天使の翔
「氷龍、そろそろお別れだけど」
「ああ」
翔の棺は、燕羽の隣り
これで永遠に一緒に居られるね
「氷龍はこれからどうするの?」
「このまま、暫くはこの島で暮らすよ」
「うん、でも」
「何だ」
「出来れば、翔の後を継いで学園の理事をお願いしたい」
「そんな柄じゃないけど」
「気が向くまで待ってる」
「ああ」
翔と氷龍にも深い絆があった
とても悲しんでいるのもわかるからそれ以上は何も言えなかった
「レンゲが満開だね」
「うん、翔が植えた」
一面のレンゲ畑
ピンクのカーペットが綺麗だった
楓はライブの打ち合わせがあった
僕も色々な書類に目を通さなければいけない
悲しくても仕事は待ってはくれない
「戻ろう」
「そうだね」
お墓の前で言った
「また来るね、燕羽がいるから寂しくないよね」
「翔、またね」
「氷龍、後はお願い」
「ああ」
都内まで送ってもらい、楓と別れた
本当にこれでいいのだろうか
僕は何がしたかったんだろう
和海が嫌いだから全てを奪おうとした
でも、その和海も今は冷たいコンクリートの中
にいる
狂ってしまった和海は人形を翔だと思い込んでいた
二度と病院からは出られないだろう
その方が幸せかもしれないね
僕ももう学園にも戻る事は無い
でもそれでいいの?
大人になるのは嫌だ
もっと楓と過ごしたい
学園は僕が引き継いだ
いずれ落ち着いたら氷龍に任せよう
会社を出て、公園で前でを待っていた
「繭」
「楓、お疲れ様」
「繭もお疲れ様」
「どこに帰る?」
「学園じゃないの?まだ学生だしね」
そう言って笑う楓
「そうだね、うん帰ろう」
楓が学園に帰りたいならそれでいい
会社は僕がいなくても大丈夫だろう
せめて、卒業するまではここで甘い生活がしたい
それぐらいの我儘は許されるよね
「お腹空いた」
「今夜は何かな」
「回鍋肉とたまごスープと春雨サラダ」
「さすが」
誰がいなくなっても時間は進んでいる
そして何も変わらないまま毎日が過ぎて行く
ーおい、それ俺のだろ!ー
ーいいじゃん!翔のケチー
ーは?いいよ、食べろー
ーやった!ー
ーったくー
ふと、そんなやり取りをしている翔と燕羽が見えたような気がした
「今、幸せなんだよね」
「幸せだと思うよ、当たり前でしょ?」
「うん」
ここは数年前まで、動物がすんでいた学園
今は人間しかいない
「楓は今幸せ?」
「もちろん、繭は?」
「幸せ」
「よかった」
楓に抱き寄せられながら歩く道
今はもう僕達しかいないけど楓がいればそれでいい
「ずっと傍にいてね」
「いるよ」
繋いだ手は温かい
だから離さない
僕がそう決めた
これからは翔には頼る事は出来ない
「繭、今更だけど聞いても?」
「うん」
「千裕の事だけど」
「楓がいいなら話して」
「繭は翔と双子と聞いたけど、千裕とも双子だと言っていたよね」
「本当は一つ違いの兄、双子じゃない」
「そう・・・ごめんね」
「急にどうしたの?」
「ううん、気になっただけ」
「僕と千裕は似ていたけど一緒に暮らした事は無いんだ」
「そう」
「中学を卒業してから出て行ったと聞いてる」
「俺には何も言ってくれなかったな」
「もうこの話はおしまい」
「うん」
「うん」
指を絡めながら微笑んだ
それだけで幸せを感じる
ここは山の中にある由緒正しき学園
部活動もいろいろと力を入れています
それとも人間に飽きた貴方、ドウブツCLUBに入りますか?
ー完結ー
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