アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
CAGE3:少年の記憶と過ち25
-
もぞもぞと腕の中で暁斗くんが動いて、小さな声でありがとうと聞こえた。
「どういたしまして。」
よしよしと頭を撫でれば、恥ずかしそうに頬を染めている。
「そんなに子供扱いしないでよ。」
「まだまだ子供ですよ。だから、いっぱい甘えていいんです。」
ね?と微笑みかければ暁斗くんは少し体の力を抜いた。
預けられる体重を心地よく思う。
「……気付いていると思うけど、俺は親父にずっと暴力を奮われてた。」
暁斗くんはゆっくりと語り始める。
「殴られたり蹴られたり……煙草を押し付けられたり熱湯を掛けられたり……全部親父の気分次第。俺は部屋に閉じ込められてた。でもね、昔からそうだった訳じゃないんだ。」
まだ小さな暁斗くんの手が、僕の胸元のシャツを掴んだ。
「母さんが生きていた頃は平和で幸せな家庭だった。少なくとも俺はそう思ってた。母さんが死んで、親父は別人のように豹変したんだ。そこで気付いた……俺は、母さんに守られていたんだって。」
掴む手は力の入れすぎで血の気が引いてしまっている。
僕はそれにそっと手を重ねた。
「当時は分からなかった、気付けなかった。今思えば、母さんが日に日に痩せ細っていって、どう考えても様子がおかしかったのに……俺は母さんが死んでしまうまで、何も気付けなかった…。」
倉橋さんも僕も何も言わず、ただ紡がれる言葉に耳を傾けた。
「母さんはずっと俺を守ってくれていた。俺を守ったから死んでしまった。母さんを殺してしまったのは、きっと俺だ。」
この子は、この小さい身体にどれだけの気持ちを背負ってきたのだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
112 / 269