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CAGE3:少年の記憶と過ち28
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『お願いします!一人じゃ不安で……ダメですか?』
「……うーん、わかりました。でも僕編み物なんてやったことないですよ?」
『今時ネットでも調べられますし、本屋とかにもテキストとか売ってありますから大丈夫です!分からないところは僕がフォローしますから!』
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すっかりやる気になってしまった雪見くん。
ここで引くわけにもいくまいと、編み物をやることになってしまったんですが……。
どうやら僕には編み物の才能が空っぽのようで、毛糸が次から次に絡まっていく。
「ちょっと意外……直兄って料理得意だからてっきり手先が器用なのかと思ってた。」
僕を手伝ってくれていた暁斗くんは驚いた顔をしつつも、何だか嬉しそうだ。
「料理も修行中ですし、僕は出来ないことの方が多いですよ。」
「そうなんだ。……これ、洋兄へのプレゼントなんだよね?」
「はい、一応……間に合えばの話ですけど。」
全く形になっていない僕の物とは対称的に、スマホで雪見くんから送られてきた画像には半分ほど編み込んだマフラーが写り込んでいた。
「はぁ……このペースで間に合うでしょうか…」
「だ、大丈夫だよ!まだ日はあるし、俺も手伝うからさ!」
暁斗くんが明るく励ましてくれているのに、肝心の僕が先に折れてはいけませんよね……。
「ありがとう、頑張ります。……そう言えば、暁斗くんはプレゼント何が欲しいですか?」
「…ぇ」
「サプライズもいいですけど、暁斗くんはまだ自分が欲しいと思う物を貰った方がいいと思うので。無理難題でなければ叶えさせてください。」
「欲しいもの……」
暁斗くんは考え込むように、ジーっと僕の顔を見た。
「暁斗くん?」
「直兄と洋兄。」
「ぇ……」
「直兄と洋兄、二人がいれば何もいらないや。あ、出来れば笑顔で居てほしいけど。」
なんて、子供らしくない回答だろう。
悪いことではない、けれど……。
僕は倉橋さんが良くやるように、暁斗くんの額を指先で弾いた。
「痛っ……な、何するんだよぉ。」
「僕と倉橋さんが暁斗くんと一緒に居るなんて当然のこと過ぎて、何のプレゼントにもなりません。いいですか、これが日常なんです。ともすれば当たり前すぎて忘れてしまいそうな日常。だから、もっと貴方が欲しいものにしてください。もっと、甘えてほしい。」
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