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CAGE3:少年の記憶と過ち29
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暁斗くんは額を抑えたまま、もごもごと口ごもった。
「……じゃあ、」
ようやく開かれた口は躊躇いがちだ。
「スケッチブックが欲しい。」
「スケッチブックですか?」
「うん、俺絵描くの好きなんだ。」
照れたように笑う顔は、とても子供らしい。
「そうだったんですか。それじゃあ特別、絵の具も付けちゃいましょう。」
「え、いいよ!そんなにたくさん…」
「いいじゃないですか、それぐらい。その代わりお願いがあるんです。」
「?」
「一番最初に描いた絵を、一番最初に見せてくださいね。」
数回パチパチと瞬きをしたあと、そんなことでいいならと笑ってくれた。
「あ!直兄、そろそろ洋兄が帰ってくるよ!」
時計見れば確かに18時手前。
今日は早いと言っていたから、そろそろ帰宅してしまう。
僕らは慌てて後片付けを始めた。
「あ……晩ご飯用意するの忘れてました……」
「どうしよ……今からじゃ間に合わないよね…?」
程なくして帰宅した倉橋さんは怒りはしなかったけど、行動が怪しいと疑われた。
「……また変なこと考えてるんじゃないだろうな?」
「そ、そんなことないですよ。暁斗くんと遊んでいたらこんな時間に……すみません。」
本当だろうな?と飛んでくる疑いの視線が痛い。
うぅ……無言が怖い。
「洋兄、本当だよ。俺が付き合わせちゃったんだ。だから怒らないで?」
僕を庇うように暁斗くんは言った。
倉橋さんは短く息を吐き出して暁斗くんの頭を撫でる。
そのまま自然な動作で、僕の頭にも手が乗せられた。
「怒っているんじゃない。……心配、してるんだ。」
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