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トクメイ…本名・匿間は微苦笑を浮かべる。…こんな愛想よく接してくれるなんて、思ってもみなかった。
出てきた女性社員…三上は、力任せにバンバンと匿間の背を叩く。
「もぅ~…。みんなで散々心配したんだからねっ!!…って言っても、まだ出勤時間には早いから、今のオフィス私一人なんだけどさ。積もる話もあることだし、ほら。座って座って。」
三上に案内された席は、元の自分の机だった。荷物は粗方処分されているが、空席のまま残されているのはビックリした。
「××さんがさぁ~。」
××とは、匿間に『君は、またやってしまったなぁ~…。』と言った上司である。
「怒り過ぎたって、すっごい落ち込んじゃってさぁ~。このめっちゃ忙しい時期に中途採用枠一つ空けておいてんの。」
「え…。」
ぽかんとしている匿間に、三上はウィンクして誘いかけてくる。
「だからね、匿間君。君が良ければなんだけど、もう一度ここで働いてみない??」
「~っはい!!働かせて下さい!!」
椅子から瞬時に立ち上がって、匿間は深々と頭を下げる。
彼を見て、三上はやだな~匿間君かしこまっちゃってぇ~、と片手を上下に振った。
匿間は、三上に自分が仕事から遠ざかっていた二ヶ月間の話を訊く。十分ほど経った頃に、オフィスのインターフォンが再び鳴り響く。
「あら。…誰かがやって来たのかしら。」
匿間は来客に対応したいが、まだ正式な社員ではない。従って、自然と三上が対応するため、インターフォンに出た。
「…あっ!!AKケミカルの担当さんですか。…忘れ物の件ですね。少々お待ち下さいませ。」
「AKケミカル…。」
一人でに、匿間は呟く。…数ヶ月前、自分が仕事上で散々迷惑をかけてしまった相手だった。電話越しにしか話した経験はなかったが、柔らかい声をした男性だった。
三上は素早く鍵を外して、扉を開ける。音に釣られてそちらを眺め…入ってきた人物に、匿間は目を見開く。
世間話を終えた三上は、匿間の異変に気がついたのか。声をかけてくる。
「…ああ、匿間君は面識なかったかしら。ええっと、一ヶ月前から電話対応じゃなくて直接訪問していただくことになったの。…こちら、AKケミカルの担当さん。」
AKケミカルの担当は、恭しく頭を垂れ、唖然としている匿間に近寄る。匿間に名刺を手渡すと、にっこりと笑う。
「…初めまして。私、AKケミカル営業の一冬と申します。以後、よろしくお願いいたします。」
数時間前に二度と会えないと思っていた顔を見て、匿間は瞬間涙目になる。
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