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残酷なエゴイスト
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だが、ソワールはそれで諦めなかった。
俺の棺に取り縋って泣きながら乞い、次第に窶れて衰弱していった。
血色の悪い肌に痩けた頬は今にも死人になりそうな様相だった。
このまま此処で死なれても寝覚めが悪いと思い、話くらいは聞いてやる事にした。
「ここまでして君が生き返らせたい女とは、一体どんな女なんだ?」
一通り食事と水を与え、体力が回復した頃に、そう問うてみた。
「………母親だ。」
ぽつり、と、聞き取る事が常人ならば難しい程度の音量で呟いた。
「俺の母は昔、魔女狩りにあって火炙りにされた。俺は泣きながら見ている事しか出来なかった。」
「………」
俺は唯、懺悔にも似た告白を、黙って聴いていた。
「焼かれながら母は俺に向かって微笑んでいた。『泣いちゃダメよ』と繰り返しながら、微笑んで死んでいった」
「それで君は、どうして彼女を甦らせたいと?」
懺悔は、終わった様だった。
しかし今度は狂人の様に俺に縋り付き、叫んだ。
「俺は謝りたいんだ!幼くてごめん!力が無くてごめん!助けられなくてすまなかったって!!!」
俺は、深く溜息を吐いた。
「そんな自らのエゴの為に、焼け爛れた姿でいいから、と?君はつくづく残酷な人間だな」
「残酷……」
ソワールは呆然としている様だった。自分が残酷な人間呼ばわりされたのが、余程ショックだったらしい。
「自分のエゴを振り翳す前に、まずは誰もが傷つかない選択肢を考えろ。」
言い放って、俺はまた棺の中に戻り、眠りに就いた。
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