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2.追憶
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雨が降りしきる中、ロックウェルは王宮の窓辺へと近づいた。
友人をこの手で封印し早一年――――。
それは長いようで短い一年だった。
(あの時は自分が正しいと胸を張って言えたものだが…)
振り返ってみればそんなことはなかったように思う。
***
ロックウェルはここ―――アストラス国王宮内で魔道士を統べる役割を任されている。
王宮仕えの魔道士の数はおよそ150人。
若くしてそんな大役に任ぜられたのは非常に名誉なことだった。
友人であるクレイもその報告をした時は酒を注いでおめでとうと言ってくれていた。
その時王宮魔道士にならないかと誘ったりもしたが、彼は自由が一番だから宮仕えはお断りだと言っていたため諦めた。
彼の魔力の高さから言えば十分王宮でもやっていけるのに勿体ないとさえ思ったがこればかりは仕方がない。
それからも時折王宮から息抜きに抜け出しては彼を訪ね酒を酌み交わした。
そんな関係が終止符を打つことになるとはその時には夢にも思っていなかった。
事の始まりは王宮内で起こったとある事件が発端だった。
王宮に勤める女性官吏がまるでメドゥーサによって石化させられたかのように、姿形はそのままに水晶化したのだ。
まさにそれはあっという間の出来事で、誰一人として何が起こったのかわからなかった。
しかしその話を聞いたロックウェルはすぐさまそれが黒魔道の術だと察しがついた。
何故なら以前クレイが鳥を水晶化して、飾りにちょうどいいだろうと笑っていたのを思い出したからだ。
(まさか…!!)
あの面倒臭がり屋のクレイが意味もなくそんなことをするはずがないとは思った。
けれど同時に、奴ならやりかねないとも思ったのだ。
時折荒んだような眼差しで過去を振り返る姿が脳裏をよぎる。
何もかもがどうでもいいと、どこか諦めたように笑うその姿――――。
その姿はどこか危うくて、得体のしれない怖さを秘めているような気がした。
だからこそ、問題が王の耳へと届けられた時につい横から言ってしまったのかもしれない。
『その魔法を使える者を知っている』――――と。
けれど今回の犯人だという確証はない。
だから自分が探ってくると言った。
それに対し王から捜査の全権を任されることとなった。
それから暫くクレイの周辺を探り、彼が請け負った仕事も調べて回った。
そんな中で手に入れた情報の中にそれは確かにあった。
『少女の水晶像を手に入れてほしい』
それを見て確信した。
犯人はクレイだ―――と。
***
「お前だと思ったのに…な」
ロックウェルはそっと手を握りしめ、当時を思い返す。
クレイを封印すれば魔力は途絶え、水晶化された官吏は元に戻ると思っていた。
けれど元に戻るどころか、その水晶像は何者かに奪われてしまったのだ。
当然それは封印されたクレイの仕業でも、依頼主である男の仕業でもなかった。
思いもよらぬ、第三者による盗難だったのだ。
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