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立嶺様と愉快な仲間達
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「立嶺様、どうかしましたか?」
「あ?」
涼しげな声に意識が覚醒する。
顔を上げると沢山の瞳が俺に注がれていた。
・・・・・・ああ、そっか。親衛隊の連中と一緒にいるんだったか。
「悪い、なんでもない。かまわず続けてくれ」
その言葉に周りで不安そうにしていた連中も俺を気にしながらも漸く動きだした。
チラチラ送られる視線は仕方ないと諦めるしかないけど。
その中でもいつまでもなくならない視線に溜め息を吐きたくなる気持ちをなんとか圧し殺してその方向に顔を向けた。
「・・・・・なんでしょう、桜吹先輩」
「それはこっちの台詞なんですけど立嶺様?」
今は、俺に親衛隊ができたその当時から恒例となっている月一回の親衛隊の活動報告会の最中だった。
まぁ活動報告会なんて名ばかりで最近ではもっぱらお茶会と化してるけど。
それでも小さくてふわふわしている連中を見ると和むし、キラキラな瞳を見ていると癒されるわけで。
要するに俺は自分の親衛隊がそこそこ気に入っている。
そしてこの何か言いたげに此方を見てくる1つ上の先輩のことも。
桜吹純先輩。
桜吹と書いてハナブキと呼ぶ。
ゆるふわセミロングを肩まで伸ばし毛先は軽く遊ばせて、おまけに背も小さく、なんていうか見た目まんまトイプードルだ。
影ではトイプー先輩なんて呼ばれていたりする。
まぁ、そんなこと知ったら発狂するだろうけど。
プライドを傷つけられた!とか言って。
とかなんとか色々言ってるけど、要するに俺は桜吹先輩のことを好いている。
この触り心地の抜群な髪も、まるで本物の犬を撫でてるようですっごく癒される。
しかも先輩も目を細め気持ち良さそうな顔をするから俺もますます調子に乗るわけで。
「・・・・・・・あんた達はいつまでそうしてるんですか」
俺が先輩の頭をわしゃわしゃ撫でまわす、それを先輩は気持ち良さそうに受け入れるといった端から見たら異様な光景は副隊長の冷静な声が掛けられるまで続いた。
「え・・・・・・ふにゃゃゃゃゃああああ!?!?!?申し訳ありません申し訳ありませんあああ僕はなんてことをいくら気持ちいいからって立嶺様の手に身を任せてしまうとは違うんです違うんですけして隊長としての立場を利用して立嶺様の側にいれば構ってもらえるだなんてそんな不埒なこと一切思っていまっ・・・アダッ」
犬というより猫みたいな声で奇声をあげたと思ったら青くなったり赤くなったり忙しなく顔色を変える先輩に容赦なく振り下ろされる手刀。
そのあまりの痛さに目を潤ませ患部を押さえながら平然とした佇まいで手刀のまま冷たい瞳を隠そうともしない副隊長 ― 田邊遼一 ―を睨みつけた。
「田邊あんたいきなりなにするの!僕に恨みでもあるっていうの!?」
「別に」
「別にっ!?」
「うざかったから」
「うざっ!?」
「そういうところもうざいんですけど」
「前から思ってたんだけど、田邊、君さ実は僕のこと嫌いでしょ」
「・・・・・・・・・・・・・別に」
「間が長いんだよ」
突如はじまった桜吹先輩と田邊の漫才のようなやり取りに周りは慌てるどころか"またか"と遠目で見て相手にもしない。
いやいや君達はそれでいいかもしれないけど、この2人の相手をするのは俺なんだよ。
毎度のこととはいえ勘弁してほしい。
ほっとくとこのままどんどんヒートアップしそうな言い合いにそろそろ横槍を入れることにした。
というか元々横槍を入れてきたのは田邊だけど。
はぁ・・・・・そんなこと言ってても仕方ないか。
「桜吹先輩、田邊もいい加減に」
「はい。なんでしょう」
「なにか」
俺が名前を呼べばとたんに静になり間髪入れず近くに歩み寄ってくる。
そのまま跪きそうな勢いで。
それに若干引いて仰け反り一歩距離をとる。
「え、ぁ、その・・・・・・もうすぐ下校時間、だが」
「え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もひゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!もうこんな時間どうしようどうしましょうこんな時間まで立嶺様を拘束するなんて立嶺様の時間を僕のためにこんなに長く使っていただけるなんてああああなんて幸せ!!!」
両手を広げ"神様ありがとー"と声を張り上げる。
そのうちくるくる回りそうだ。
どうでもいいけど本音と建前がごちゃ混ぜですよ。
どうでもいいけど。
田邊はまたはじまったと溜め息を吐く。
「立嶺様、あんな馬鹿はほっといて今日はもうお開きにしましょう。寮まで送ります。ああ、お前達も片付けをして引き上げるように。そこで自分の世界に入ってる人は捨て置いていいから」
田邊の先輩に対してのあんまりな態度に周りからは注意するでもなく「はーい」とどこぞの幼稚園児かと問いただしたくなるような暢気な声が返ってきた。
それから未だにアハハウフフな世界から帰ってこない桜吹先輩を本当に放置してテーブルの上を片付けはじめた。
ある程度キレイになったところで田邊が寮まで送ると言った。
周りに花を飛ばしている桜吹先輩を気にしつつ頷けば「ああ、あれは気にしなくていいですよ。ただの空気とでも思ってください」となんとも辛辣な言葉が返ってきた。
「それでは後はお願いします」
「はーい」
「立嶺様、さようならー」
あえてもう一度言おう。
いったいここはどこの幼稚園だ。
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