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立嶺大和親衛隊副隊長
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「ところでなにかあったのか?今日はずいぶん上の空だったけど」
「ん?・・・・いやなんでもない。大丈夫だ。ちょっと寝不足なだけだから」
「そうか?ならいいんだけど」
「・・・・・・・・・ところでさ」
「んあ?」
「さっきのキャラどこいった」
ここまで読んでいただいた読者様は不思議に思うだろう。
前ページの親衛隊からの流れどこいった、と。
案ずることなかれ、作者が話をすっ飛ばしたとかいうことは一切ない。
間違いなく前ページからの続きだ。
とかなんとかナレーター気分で喋ってみる。
「いやいやそれこそ今さら過ぎない?」
「俺にとっては今さらでも読者にとっては、あんた誰?状態だぞ」
「は、なに。読者?」
読者でも作者でもなんでもいいけど、とりあえずこいつは今のこの状態をきちんと説明するべきじゃないだろうか。
「まぁなんだっていいけど。・・・・・あっちの方がちびっ子受けいいからな。桜吹先輩を窘める時も」
「あれは窘めるとは言わない。正しくは放置だ」
「・・・・・・・・それよりうちの子達素直ないい子ばかりで立嶺様も安心ですね」
「今やられると違和感しかなくて気持ち悪い」
「はははっ、ひでー」
ここいらでお気付きかもしれないが、今俺が話している相手は俺の親衛隊副隊長の田邊遼一だ。
同姓同名なんかじゃなく間違いなく本人だ。
「ところでマジな話、大淵聖には気をつけて」
「は?大淵?」
突然なんの話だと目を丸くしていれば田邊は静かに口を開いた。
「あいつは何を考えてるか分からないから。俺はともかく隊長とも他の隊員とも立嶺大和親衛隊に所属する理由が違う。俺でもあいつの考えは読めない」
先程までのふざけた態度とは一変して真剣な表情の田邊に俺はなんの言葉も紡ぐことができなくなった。
「ということで立嶺様もくれぐれもお気をつけて」
それでは、と綺麗な角度のお辞儀を残して足取り軽く立ち去る田邊をただ見送ることしかできなかった。
気付けばすでに俺の部屋の前だった。
なんだったんだ?
相変わらずあいつの変わり身の早さには着いていけない。
こんなところでいつまでつっ立ってても疑問の答えが出るはずもなく、しょうがないのでいい加減部屋に入ることにした。
否、入ろうとした。
カードキーを機械に通そうとしたその時、
「あれ、大和今帰り?」
聞き慣れた声が俺の鼓膜を揺らした。
ゆっくり振り返ればやはりというか清都がいた。
「珍しいな、お前がこんな時間に帰ってくるなんて」
「・・・・・ああ、まぁ・・・たまにはね」
「・・・・・?いや、でも本当に珍しいよな。今日は誰も連れてないんだな」
そう言うと清都は何故か顔を歪めた。
しかしそれも一瞬のことで次の瞬間には笑顔になっていた。
「ええ~?そうかな?俺ってそんなに節操なしに見える?だったらちょっとショックかも」
気のせいか?
「それより晩御飯どうする?何か予定ある?」
「いや、特にないが」
「だったら食堂行かない?」
別段断る理由もないので一度部屋に入り、貴重品だけを持って食堂に行くことにした。
食堂まで清都と並んで歩いていると、同じく食堂に行く者達で廊下はごった返していた。
それが俺達が歩けばとたんに静まり返り、皆端に避けていく。
まるで旧約聖書のモーセの受戒だなと、その奇妙な光景をどこか冷めた気持ちで見ている自分がいる。
この学園で過ごして早一年。
大抵のことには慣れたつもりだが、この悪癖には一切慣れる気がしない。
ここの生徒は見目麗しい者を崇拝する傾向にある。
親衛隊がそのいい例だ。
「・・・・・・はぁ」
「これからご飯食べるのに、なんで溜め息?」
「・・・・いや、なんでもない。ただこの光景にはいつまで経っても慣れないなと思って」
「大和って以外と繊細だよな。こんなの気にすることないって」
「お前はそうかもしれないけど」
「だいたいこんなものはほっとけばいいんだって、てか自分にだって親衛隊がいるくせに、なんでかな?」
「あれとこれとは別物だろ・・・・・・着いたぞ」
ガヤガヤと賑やかな音がするその空間を隔てるドアに手を掛けた。
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