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主人公?との対峙 …2
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「ところで……」
少しの沈黙の後、そう切り出したマリエに(話題を変えてくれるんだ)とルシエルは安堵した。
がしかし、マリエの次の質問に再びルシエルは動揺する事となる。
「アルフレッド様って、婚約者……と言うか、お付き合いされてる方はいらっしゃらないんですか?」
「えっ……?いや、さぁ、知らない、なぁ」
歯切れ悪く答えたルシエルを見て、マリエがぷうと口を尖らせた。
「えー?その反応は、知ってるんじゃないですかー?あ、そうか、他人のそういうのを聞くのはマナー違反でしたね!私ったら、慣れてなくてすみません。……あっ!じゃあ、アルフレッド様の、その……女性の好みとか……ご存知ですかっ?」
後半、マリエが頬を染めたのを見て、ルシエルは心がギリと痛んだ。
間違いなく、マリエはアルフレッドに恋をしている。
それをこんな近くで見せられて、居た堪れない気持ちになった。
「あー……どうでしょう?聞いたこと、ないです」
ここもまた歯切れが悪くなってしまったルシエルだったが、それもそのはず。
なぜなら、現在アルフレッドが付き合っているのはルシエルであるし、もし今後マリエに気持ちが移るとしても、ルシエルには"アルフレッドの女の好み"を計り知ることは出来なかった。
「えー?それも秘密ですかぁ?」
マリエが再び口を尖らせた。
その顔になんだかイラついたルシエルは、思わず強い口調でこう言ってしまった。
「と言うか、そんな事を聞いてどうするの?シンプソン嬢こそ、アルフレッド様とどのようなご関係で?」
ルシエルのその問いに、マリエは両手を頬に添えて恥ずかしそうに笑った。
「えっ⁈えっと、仲良く、させていただいてますっ」
「うふふ」と笑うマリエの様子は、まるで「アルフレッドと特別な関係だ」と言わんばかりの態度だった。
アルフレッドの事は信じているが、二人きりでいるところを見たことのないルシエルには、気分の良いものではない。
「なんだか、アルフレッド様と何かあるような言い方ですね」
ルシエルのそれは、思っていた以上に低い声だった。
すると、マリエが不思議そうな顔をして首を傾げた。
「何か、問題ありますか?だって、アルフレッド様には婚約者はいらっしゃらないんでしょう?ミシェル様かと思えば違うみたいだし……私が狙っても問題ないですよね?」
マリエの堂々とした物言いに、ルシエルはたじろいだ。
ゲームの主人公はこんな強かな性格だっただろうか。
いや、操作する人によって千差万別になるのだろう。
考えようによっては、狙った相手をとことん追いかけて落とすのだから"ただの可愛い女"では務まらないのは確かだ。
(やっぱり、この世界はゲームの世界なの?マリー……マリエがこんなに堂々とアルフレッド様のことを追いかけるのは、やっぱりゲームの補正か何かが働いてるから?)
何と返事をすべきか悩んでいる間に、マリエが先に口を開く。
「あれ?どうしましたっ?……あ!まさか、ルシエル様もアルフレッド様を狙ってるとか?」
「……っ」
ルシエルは動揺しそうになったのを必死で抑えた。
こんな女に、自分の気持ちを悟られたくないと思ったからだ。
マリエは何を思ったのか、フッと笑った後「なんちゃって」と舌を出した。
マリエはおどけた様子を見せたが、ルシエルはまたしてもそれに反応することはできなかった。
マリエが再びチューリップに目線を向けた事で、ルシエルはようやく息をついた。
「まぁ、なんてゆーかー……私、運命を感じたんです」
「……え?」
マリエがチューリップを眺めるのをルシエルは盗み見た。
(運命?)
ルシエルがマリエの言葉の意味を考えようとした時、マリエがルシエルの方を見た。
「誰にも渡さない。……っていうか、アルフレッド様は私のものなんです」
「……」
(は?)
ルシエルは何も言えなかった。
マリエが何を言っているか理解できなかった。
「色々違う事もあるけど……私はちゃんとやってるし」
そのマリエのつぶやきは、とても小さなものだった。
けれど、ルシエルの心を大きく揺さぶるには十分な内容だった。
(違う?……ちゃんと、やってる?)
「ルシエル様は……ルシエル様が私のライバルなのでしょうか?」
そう言って再びルシエルに向けられた目は、いつも見るマリエのものとは違っていた。
目の奥に、あの日見た炎の様な赤が見えた時、ルシエルは頭の奥に痛みを覚えた。
それと同時に、身体が震える。
「っ、っ」
ルシエルの目の前が真っ赤に染まりかけた時、後ろから声が飛んできた。
「ルシエル君!」
その声のお陰で、ルシエルは自分の足が地についていることを意識することができた。
もう少しで、倒れる寸前だったのだ。
足を踏ん張って、ゆっくり振り向くと、ハンナが手を振りながらこちらに歩いてくるところだった。
しかしルシエルの顔を見て、その隣のマリエへと視線を移動した途端、駆け寄るようにやって来た。
「どうしたの?……っていうか、二人で何を話してたのかな?」
ハンナがマリエに笑顔を向ける。
「えっと……ふふっ、秘密の話です!……じゃあ、ルシエル様、また!」
マリエはそう言って足早にその場を去っていった。
マリエが見えなくなってすぐ、ハンナはルシエルを支えるようにして近くのベンチへと移動した。
「ルシエル君、どうしたの?あの子に何か言われた?……まさか、殿下との事がバレたの?」
ハンナの言葉に、ルシエルは首を横に振る事しかできなかった。
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