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「お前、そんなに死にたいのか」
冷めた視線で早紀を見下ろすと口端だけ上げながら龍は言う。
「あの人が殺されるより俺が殺された方がマシだろ!」
「あの女は…」
早紀の言葉を聞き龍は何かを言いかけたが、ハッとしたようにすぐに言葉を切り胸ぐらを掴んだ早紀の手を振り払った。
「俺が死んだらあの人が死ぬ必要無くなるだろ…?」
早紀はちらりと龍の顔を見上げつつ拳を握りしめた。
「人数合わせじゃねぇんだよ。お前を殺そうが何しようがあの女は殺す。そんだけだ」
「…でも」
「でもじゃねぇ。お前にどうこう言われる筋合いはねぇ」
別にあの女に執着していた訳でも一目惚れした訳でもない。
ただ今日まで仲良くしていた人を殺すなんて残酷すぎて、まだ早紀には理解できなかった。
早紀の目からは気づけばぽろぽろと涙が流れていた。
「でも…本当はあんただって殺したくないんだろ…?」
早紀には龍がとても悲しい顔をしたように見えた。
「これが仕事なんだよ、黙って寝てろ」
いつもより少しだけ優しい声でそう言うと、早紀の目から零れる涙を手で拭い、そっと頭を撫でて部屋を出ていった。
涙を拭きながら早紀はベットに寝転んだ。
殺される者ほど惨めで辛い思いはしないだろうが、殺す方もきっとそれなりに重い物を背負って、覚悟を決めて人を殺すのだろう。
そんなことを考えながら部屋を見渡してみる。
クローゼットの中から何か紙切れのようなものが見えた。
紙切れを抜き取り、半分に折られた紙を広げた。
「え……」
それは写真だった。
そこに写っていたのは龍とあの女。
「あの2人、知り合いだったのか…?」
ガチャッ
突然ドアが開いた。
慌てて後ろを振り返ると、そこにいたのはたった今殺しを終えてきた冬夜だった。
「それ、龍と香織ちゃんの写真じゃねーか」
「冬夜さん…この人ターゲットなんですよね?」
女を知っているようだったので恐る恐る聞いてみる。
「あぁ、来週には殺す予定だ。香織ちゃんと龍はな、中学ん時付き合ってたんだ」
「でもあの2人、お互い敬語使ってて見ず知らずの人同士なのかと…」
冬夜は全てを知っているようで、詰まることなく話を続けた。
「それはお互い一旦忘れたから。香織ちゃんの家庭柄のせいで2人は付き合う事を反対された。だからあいつらはお互いのことは忘れようなんて言って会わなくなったんだけどよ、最近偶然再会しちまったらしくてな」
「じゃあ…お互い知っていながらわざと敬語なんか使って…」
冬夜はこくりと頷くと、少し悲しそうに笑いながら言った。
「そんなやっと再会できた相手を殺さなきゃいけねぇんだ、いくらアイツでも本当は嫌なんだろうよ。唯一香織ちゃんだけが一番龍の心を動かした女だったからな」
「何が仲良しごっこだ…本当はずっと今日みたいに仲良くしたかったはずなのに。写真まで大事に取っておいて…」
少し真面目な顔をして冬夜は早紀を見た。
「でもな、これが俺たち殺し屋なんだよ。そういう残酷な運命とも向き合わなきゃいけねぇ。」
それだけ言うと冬夜は静かに部屋を出ていった。
「あいつ……」
写真に写っている楽しそうな2人を見ると、理由もなく涙が止まらなかった。
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