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ーーー甘やかされた、土日も終わって。
今日は、とうとう月曜日。
僕は、先生にもらったピンで前髪を留めて、玄関の前に立っている。
「おい、綺羅。本当に大丈夫なのか?
今日一日くらい、まだ休んどいたらいいんじゃねぇの?」
先生の心配そうな声に、けれど、ふるふると首を振る。
もう、熱も下がったし、大丈夫。
「……本当に、車、乗ってかねぇの?」
今度はコクリと頷く。
……いくら事情があるとは言え、生徒と先生が同じ車で登校とか、何事ってなるでしょ。
「……学校までの道、大丈夫なんだな?」
……先生って、もしかして、過保護?
僕は別に方向音痴じゃないし、大丈夫なのになぁ。
このままだと、このやり取りがいつまでも続きそうだから、名残惜しいけど、先生に背を向けて、扉を開ける。
ちらっと後ろを振り返ると、先生が本当に心配そうな目でこっちを見ていた。
……なんだか、小さい子どもにでもなったような気分。
それでも、なんだか嫌な気はしなくて、むしろ心がぽかぽかする。
心配そうな先生に、バイバイって、手を振って、今度こそ扉の外に出ようとすると。
「いってらっしゃい、綺羅。気をつけてな」
その声に、思わず振り返る。
……ずっと、僕からは遠かった、その言葉。
優しい先生の表情に、目頭がじんとあつくなる。
"いってきます"
まだ、音にはならないそれを、口の動きだけで伝える。
そしたら、先生はやっぱり甘く笑ってくれて。
胸のところが、ほんわりと暖かくなって、くすぐったい。
ーーー慣れない視界で、慣れない気持ちを抱えて、歩き出す。
たった数日のことなのに、嘘みたいに変わった環境。
ーーー前から冷たい風が吹き付けてくるけれど、それを遮る前髪はもうなくて。
風は冷たいはずのに、なんだかとってもぽかぽかして。
先生が用意してくれた、"お弁当"が入った鞄は、いつもより重いはずなのに、足取りはとっても軽い。
あんなにも息苦しかったはずの日常が、急に、僕に優しくなったみたい。
ーーーーーそうはいっても。
「…………。」
やっぱり、緊張はするわけで。
緊張に冷え切った手を、ぎゅっとにぎる。
………学校までの道は、人気も少なくて、どうにか耐えられたけれど。
ざわざわ。
扉の向こう側からきこえる、いつも通りの喧騒。
そこに、クリアな視界で挑むことは、僕にはまだ、すこしむずかしい。
バク、バク。
ドク、ドク。
嫌に早鐘を打つ心臓をかかえて、
冷や汗をかきながら、教室のドアに手をかけたままかたまっていると。
「どうしたの?入らないの?」
ポンッ、と肩に手をかけられた。
「!?!!?」
びっくりして振り返る。
すると、視界には見覚えのある、顔。
彼は、たしか。
『あれ、綺羅、またどっかいっちゃうの?俺たちとご飯食べよーよ!』
………いつも、声をかけ続けてくれてた、あの人だ。
見つめ合う瞳は、穏やかで優しそうな色をしている。
優しい人の目は、やっぱり優しいんだなぁ、なんてぼんやり考えていると、
「えっ……?も、もしかして、綺羅………?」
彼はそういって、ぱちくりと目を瞬かせた。
その質問に、コクリと頷く。
それはそうだ。
……急にどうしたんだろ?
……あ。
そういえば、僕、前髪…………?
「………!」
見られ、た。
冷や汗が背中を伝って、足が地面に縫い付けられてるみたいに感じる。
もう一歩もここから、動ける気がしない。
けれど、
「やば………、綺羅、めちゃくちゃ綺麗じゃん」
そう呟いた彼は、僕の腕を掴んで。
「ねーーーー!!!皆、ちょっと聞いて!!!!やばい!!!!!綺羅が!!!!美人すぎるんだけど!!!!!!」
ーーーーー僕をみんなの前に、連れ出した。
ーーーーーーーーー
1万アクセス突破、ありがとうございます(´;ω;`)
初心者の拙い小説にこんなに反応していただけて、感無量です…!
少しでも読みやすくなるように精進していきたいと思います。
いつも読んでくださっている皆様、いいね、お気に入り、しおり、コメントをくださった皆様、本当にありがとうございます!
追記:皆様のおかげで、イイねランク83位、お邪魔しておりました(/ _ ; )
まさかランキングにお邪魔できるとは夢にも思わず…!
本当にありがとうございますヽ(;▽;)ノ
2018.1.16
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