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歩いて転んでドキドキキャンプ!6(創side)
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かなり落ち込んでしまっている聖夜だが、聖夜のことを悪いと思っている人は1人もいないと思う。もしいるのなら俺が殴りに行ってやる。
好きな人には常に笑顔でいて欲しいと、そう思うことは罪だろうか。小さな体をさらに小さくして小刻みに震えている聖夜は寒いのだろうか、怖いのだろうか、それとも泣いているのだろうか。
顔を下げているせいで泣いているか否かを知ることはできなかったのだけど、その声が潤んでいることで泣いているのだと言うことが分かった。そんなにも自分を追い込む必要はないと言うのに。
腰に手を伸ばせば聖夜もこちらの背中に手を伸ばす。大丈夫、何も心配することはない。聖夜は気づいていないかもしれないけれど、先ほどよりも雨がやんできている。
何か聖夜の気持ちを和らがせることはできないだろうか。一定のリズムでポン、ポンと背中を叩いていてあげていて、すると『苦しい…』と声が聞こえてきた。どうやら腕に力を入れすぎていたらしい。
『わりィ、わりィ。……おっ、せーや!晴れたぞ!』
腕を離して代わりに頭を撫でて。誰かの頭を撫でることはもう癖になっている。年の離れた妹や弟が居るおかげだろう。
雨音が止み、岩の間から少し顔を出せば葉の間から太陽の光が溢れていた。這い出てグーッと伸びをする。
きっと10分もないくらいの短い間の出来事だったのだけれど、体感では1時間近く経っている。
それから助けが来たのはさらに1時間近く経ってからだった。その山の管理をしているらしいお爺さんと40代の男性教師が岩に座っていた俺を見つけて駆け寄ってくる。荷物を放り出したことで大体の場所を絞ることができ、発見までの時間を短縮できたと後から言われた。
聖夜は男性教師に背負われて、もちろん聖夜は病院に直行だ。だが他のメンバーは続けると言うことになったらしい。
慌てなければそこまで強くない雨だったのだろう。まぁ聖夜は寝起きだったし、山に慣れていないから仕方がなかったのだろう。別にそこを責めることはしない。
聖夜は数人の教師とともに病院に行ってしまったのだが、俺は顔の擦り傷だけ手当てしてもらって他の教師と皆んなの元を目指すことになった。
山の上は平らになっていて、山小屋はトイレと風呂がある。一目散にそこに行って体の泥を洗い流し、持って来ていた着替えに着替えて外に出れば見知った顔が4つ並んでいた。
海達だ。聖夜のことについて怒られるだろうか。聖夜が感じていた申し訳ない気持ちが今はよく分かる。
せっかくできた友達だったのに、また教室で1人になってしまうな。深く頭を下げて謝罪の言葉を口にしようとした時、ギューッと強く抱きしめられてしまう。驚きに顔を上げればすぐそこに海の顔があって思わず『うわっ!!!』と仰け反ってしまった。だが、お陰で海の瞳が潤んでいることに気づく。
海だけではない。楓も綾人も若葉も、皆んな笑っていた。心の底から安心したようなその顔に此方が戸惑ってしまうほどだ。
『はじめーん!無事なんやんな?山の下に落ちとったって聞いたから死んだかと思ったわー!』
『勝手に殺すなよ…。すまん、心配かけた。それから…聖夜のこと任せてくれたのに…』
『聖夜のことです。きっと雨に驚いて走りでもしたのでしょう?』
『それで足を滑らせて落ちた、って言うのが1番考えられるっぽい!聖夜氏はドジさんだからね〜』
『でも、はじめんが無事で本当に良かった』
相変わらずオーバーリアクションの海。勝手に殺すなと言ってはいるが、確かにもし自分が海の立場だったなら同じことを思っていただろう。
楓とメガネのまさにその通りな考えには思わず笑ってしまう。いつも隣にいるだけのことがあると言うことか。
そして、オン眉の此方が照れてしまうような発言。相変わらずの完璧な笑顔には好きな人がいるにもかかわらずドキッとしてしまう。とても不思議な子だとは思う。この笑顔もそうだし、雰囲気からして、すぐに壊れてしまいそうな儚げな、それでいて悲しげな雰囲気を漂わせている。そのくせこの百点満点の笑顔。そんな不思議な雰囲気に惹かれてしまう人が多いことはまだ出逢って数日だが納得してしまう。
高校に来てこんなにも大切な人ができるとは思っていなかった。聖夜には感謝しなければいけないことばかりだ。
そんな大切な存在である彼らに今、言わなくてはいけないことがある。それはこれからも友人として付き合っていく上で必要なことだ。
少し緊張するけれど、大丈夫。だって、楓と海には聞くことができたことだから。
『……なぁ、名前聞いてもいーか?すまん、俺のことは知っていてくれてるみたいだけどさ、俺お前らのことまだ知らなくて…』
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