アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
転入しますがお気になさらず。6
-
パタンと扉を閉めると肩に入っていた力が抜け、扉にもたれた。
やっと一人になれた。
ここに来てからずっと薫先輩といたため、気を抜けずしんどかった。
普通の高校生らしく振る舞えただろうか。
吾妻さんの仰った高校生像になりきろうと、不徹底な敬語を使ったり、へらへらと笑顔を保つ努力をしたりしたが、あれが正解だったかはわからない。
慣れない振る舞いは想像を超えて苦しいものだった。
これを卒業するまで続けることは、途中から慣れると思いたいが、かなりの負担になりそうだ。
しかし面倒事は避けるためには、僕の変わった体質や半生を知られてはいけない。
大人達から見ると、僕は子供らしくなく変わっているのだそうだ。
だから、転入生というだけで注目を浴びやすい僕は、加えて普段のように振る舞えばきっと生徒らの観察対象に決定してしまう。
それは避けなければならなかった。
そのため僕には他の生徒と差異のない"一般"的な学生であることが要求されているのであった。
と、一息ついたところで、視線をあげ部屋を視界に入れる。
目の前は幅の広い廊下で、その両脇に部屋がある。
奥が共同スペースのようだ。
前もって知らされていたため相部屋であることに驚きはしないが、個人の部屋は予想より大きい。
扉が開いている方の部屋に案の定段ボール箱が数箱積まれていた。
十畳間にベッド、クローゼット、本棚、キャビネット、その上に鏡が掛けてあるだけで、実にシンプルな部屋である。
寝室以外の機能は共同スペースに求められるらしい。
一通り部屋を見終え、自室にロックをかけて段ボール箱に手をかける。
まだ十分に時間があることを手首の時計で確認し、僕は荷解きを始めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 25