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ばち、っと頰に触れた手を弾く。
固まる逢坂を尻目に、勢いのまま、掴まれた腕を解く。
「……忘れろ、って言ったのは…お前だろ…!」
震える肩を抱いて、そう搾り出すように言えば、逢坂は困惑したようにきゅっと眉を寄せる。
「なのに、どうしてそんな目で見るんだよ。どうしてそんな、優しく触るんだよ…!」
「…ごめん、そんなつもりじゃ」
逢坂の声を聞く度。
瞳を見る度。
触れられる度。
無理矢理抑え付けられ、燻っていたものが爆発しそうになる。
「折角忘れようとしてるのに、……っそんな、必要以上に優しくされたら、忘れられなくなるだろ…‼︎」
逢坂の肩を押して、たっと廊下を走り去る。
もうトイレなんて、どうでもよかった。
今はただ、夢の中の逢坂に会いたかった。
階段を駆け上がり、屋上へと続く分厚い扉を押し開ける。
青い空と繋がったその空間には、思った通り、誰も人はいない。
ごろりとその辺の床に転がって、仰向けになり、どこまでも青い空を見つめる。
『…君がどうしても次の晩まで待てなかったら、……いつでも、会いにおいで。待ってるから』
「……待てないよ、今日の夜までなんて」
欲しい。逢坂が欲しくて堪らない。
甘い刺激に溶かされて、逢坂しか考えられないようにしてほしい。
「……好き…」
小さく唇から漏れた言葉は、空気に溶けて、消えてしまう。
切なくて、虚しくて、遣る瀬無くて。
視界がぼやけて、頰を温かいものが伝い落ちる。
ーー今目を閉じて、眠ったら、会えるだろうか。
“…サナイ”
「え…っ」
ふいに、耳元で女の人の声が聞こえた。
やばい、そう思った瞬間に、頭がズキッと痛んで、ずるりと中に何かが入ってくる感覚を覚えた。
しかも、それは一人じゃなかった。
最初に入ってきた者に続けて、何人も自分の中に入ってくる。
「…ぁ、ああ……」
痛い。
頭が、割れるように痛い。
何人もの話し声が、頭の中でこだまする。
「…っ、ぁ……」
助けて、声にならない声が漏れる。
そこで、ぷつんと自分の意識は途切れた。
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