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──黒梓。ブラッド達とは協定を結ばず敵対する魔女の種族。
なんでそんな奴がここに?偶然なのか?それとも────。
「こいつに…、何を、吹き込んだ…!?」
「生憎だったな。私は何も吹き込んじゃいない。ただ…こいつの欲望を表面に出してやっただけだ」
「なん…だと?」
「こいつは長い間、お前に対する醜い想いを抑え込んでいた。それを解放してやっただけの事。深紅、こいつは殺してでもお前を自分のものにしたいと思っていたんだ。罪深く欲深い、愚かな願いを秘めていた」
「や…っ…やめろ!!俺は……俺はただ…っ」
ブラッドが好きだから……他人には触れて欲しくないし触れさせたくない。
そう想うのは間違いなのか…?
「それでいい。それが"俺達"、黒梓の性だ。己の欲望に従順な奴隷。それを叶えるだけの力を持ってして自制してしまう必要等どこにある?なぁ、スバル。」
"俺達"?違う、俺の母さんは白羅だ。お前達とは違う。
心の中で男の言葉を否定するが、それを見透かした様に男の口が弧を描き俺は密かに確信した。
こいつは俺の何かを知っている。俺やブラッドが知らない何かを。
そしてそれを口にする直前、俺はきっと、大切なものを失うんだと予感した。
「クローディアはお前の母だろう?ならば父は誰なのかを知っているか?」
「!!……いや、だ…」
────聞きたくない。
「スバル…っ、耳を、貸すな!そいつは弱みに付け込む!」
まだ不安定な足取りで立ち上がり、ブラッドは何とか止めようとするも意識がはっきりしないのか片手を額に添える。
俺のせいだ。俺はあと少しで彼を……。
「父の名はノアール。黒梓の魔女だ。つまりスバル、お前は白と黒の混血の魔女なのだよ。血に誇りを持つ魔女としてはあってはならない"忌み子"だ。」
"忌み子"。あぁ、そうか。だから俺は……。
「デタラメを抜かしてんじゃねえぞ!スバルを返しやがれ!!」
「おっと、これは元気そうで何よりだ。だがこれは真実だ。存在する事を許されない魔女がこうして目の前にいる。私達も彼は生まれて間もなく死んだものだと思っていたが、まさかこうして会う事ができるとはな。」
ブラッドは男に掴みかかろうとしたが、男は寸手でその手を交わし皮肉に笑う。
俺は男の腕の中で2人の遣り取りを聞きながら妙な納得を得ていた。
だから苦しかったのか。
俺の中に半分流れている黒梓の血が、欲を制御しようとするたびに暴れ回り俺に自覚させようとしていたんだ。
そう思うと今までの苦悩がストンっと収まる場所に入り、それは安息とも呼べそうな感覚だった。
「どうするスバル?この男が欲しいのなら急いだ方が良い。何やら他の魔女が嗅ぎつけた様だ。」
静まり返っていた森が何かざわめいて風が遠くの音を忙しなく運んでくる。
確かに彼を俺だけのものにするなら今しかない。けど……。
「……もう…いい…」
「欲しかったのだろう?例え手に入れずともお前は連れて行くが」
「…もう…いらない」
「スバル…っ、駄目だ…そんな事許さねえ…!」
勘の良い彼には俺の考えが分かってしまったようだ。
でも俺にはもう、どうする事もできない。
「ごめん…ッ、ごめんな……?こんなつもりじゃなかったのに…っ────さよなら、ブラッド」
だったらせめて彼の世界から消えてしまおう。
男は片側のローブを開き俺を隠すようにしてその中に収めると、俺と男の姿は最初から無かったみたいに暗闇の中へ溶けていった。
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