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第1話
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BAR・クレパスの営業時間はPM6時からAM2時までとこの界隈では早仕舞いだが、売り上げは上々。
カウンター席が5席のこぢんまりとした作りだが常連客はもとより、『美貌のマスター』の噂を聞きつけた新規の客が連日ひっきりなしに訪れていた。
照明を適度にしぼった店内でさえ一際目立つ、ミステリアスな漆黒の双眸を意図的に笑ませる。
エキゾチックな美貌を惜しげもなく客に披露しながら杉並 瑛知は今宵もカウンターに立っていた。
瑛知を一目見ようと興味本位で来店する輩は後を絶たず辟易していたが、同時に瑛知の作る酒を求めてくる味の分かる客に自慢の腕を振るうことは数少ない生きがいだ。
(そろそろラストオーダーだな)
手元の時計で時間を確認したと同時、カラン…とドアベルが来店を告げた。
その音を聞きながら、瑛知は客に笑顔を向けた。
「いらっしゃいませ」
「邪魔するぜ?」
「!」
ドアを開けた時同様、乱暴に閉められたドアからズカズカと入って来た男・国崎 登の予期せぬ登場に瑛知は驚くとともに訝しげに眉をひそめた。
国崎の威圧的で鋭い視線にひと睨みされた客が震え上がり、金を置いて立ち上がる。
逃げるように店を後にする客の背中を瑛知は視線で追うが、意識は目の前のカウンター席に陣取った男に向いていた。
立派な体躯に上質なスーツを着てはいたが一目でカタギでないことが知れる。
酷薄そうな薄い唇も、鋭い眼光を発する切れ長の瞳も29歳の男が身に付けるものとしては異質と言えたが、どんなに威嚇されようと瑛知には通じない。
侮っていると言う訳ではなく、国崎が瑛知に危害を加えることなど万が一にもないと知っているからだ。
客が一人もいなくなった店内を見渡す。
「お前のせいで客が帰っちまったじゃねぇか」
「どうせもう閉店だろ?それより喉が乾いてるんだ。なんでもいい、一杯作ってくれ」
こちらの言葉などまるで聞こうとしない男をひと睨みし、瑛知は国崎好みの濃度の高い酒に視線を走らせた。
適当にグラスに酒を注ぎ、ステアしてから差し出す。
「それ飲んだら帰れ」
「冷たいこと言うなよ。今夜暇だろ?うちに来いよ。酒飲みながら待っててやるから帰る支度をしてこい」
「はぁ?俺には俺の予定があーー」
「ここで待っててやる。俺に二度も言わせるな。さっさと支度をしろ」
先ほどの客に向けたような鋭い眼光とともに拒否を一切許さない声音。
五つも年下のくせになんて横暴なやつだと内心で吐き捨てるが、瑛知は一つため息を吐くに留め、看板を裏返した。
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