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8話(1/4)
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各部屋にはそれぞれテレビがちゃんと備わっている。
勿論談話室に置いてある物と比べたら大きさは全く違うけれどゆっくり見られて尚且つ他の住居人とのチャンネル争いだってしなくていい。
それでも大きなテレビで見る映画、それもアクション映画ならばやはり大画面で見たいもの。
「ずりー!流リモコン返せよ!俺の方が先に来てたのに!!」
「うっせーよ!んなもん早いもん勝ちだろーが。つーかお前も俺のDVD返せよ」
テーブルを挟んで向かい合った千尋の手には流が持ってきたアクション映画のDVD。
反対側の流の手にはリモコンとかれこれ10分はこの状態で睨みあっている。
それを一人離れた椅子に座った奏が紅茶を共にして優雅に見物中。
「つーかお前は何が見たいんだよ」
「オレ?何ってこれだけど……」
千尋は取られないよう背中に隠していたDVDのジャケットを流に見せた。
未来からやってきたアンドロイドのそれは人気があって1、2とシリーズがあり千尋のは新しく出たばかりの3。
ジャケットを見た流はヒョイッとそれを奪い、そそくさとプレイヤーにセットした。
「え、これ見んの?」
「なんだよ、見たがってんのお前だろ」
オレも見たかったんだ、とポツリと零した流は直ぐに背を向けてしまったが千尋にはしっかりと赤くなった耳が見えていた。
(つーかこんな事で照れんなって)
「なに笑ってんだよ!見ねーなら消すからな!!」
「あー見る見る!」
二人でテレビの前に陣取って予め用意していたスナック菓子の封を開けていく。
端から見たらただの仲良し二人組のその光景に、
「……どういう事だ」
慶一だけは扉の前で意味が分からずに固まっていた。
「慶一さん帰ってたんですね」
慶一に気が付いた奏はとことこと側に駆け寄る。
そうして慶一の視線の先、つまりは千尋と流を見て「凄いですよね」と言葉を続けた。
「最初は流の奴、ちーちゃんの事避けてたくせに最近じゃいっつもあんな感じなんですよ」
「そ、そうなんだ」
「クラスが一緒だからかな?お昼も一緒みたいですし」
「信じられない……」
慶一の中の流、という人間は自分や奏といった極々限られた相手、それも長くからの知り合いになで心を開いていた、というものだった。
それが今目の前にいる流は知り合って一ヶ月しか経っていない相手と一緒に映画を見てお菓子を摘んでいるというもので、慶一は夢でも見ているんじゃないかと頬を抓ってみた。
「あれ、慶一さんじゃないですか……って何頬っぺた抓ってんですか」
「あー……うん。痛いね、これ」
誤魔化すように笑う慶一の横で奏も気にしないでいいよと笑った。
(やっぱり慶一さんてなんか変)
首を傾げて千尋はま、いっかとテレビに意識を戻した。
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