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6話(1/6)
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ソファーに身体をゆったりと預け、林さんお手製のクッキーをおやつにボーっとテレビを眺める。
一応部屋にもテレビはあるが、談話室の方が大きくて見やすい。
(にしても、)
談話室に向かう途中、廊下で慶一と出くわした。
千尋の顔を見るなり「発作は大丈夫?」と心配してくれたが、まさか流に襲われかけたとも言えず、大丈夫と返すしか出来なかった。
発作があったら遠慮しないで頼っていいとも言われたが、あまり頼みたくもない。
「千尋くん、それ食べたらちゃんと片付けてね」
「はーい。あ、クッキー美味しいです」
洗濯物を胸に抱えた林がドアから顔だけを覗かせる。
ありがとう、とお礼を言うとシワを気にせず笑って返してくれた。
とっても暖かくて優しくて、何だかもう一人の母親のように思えてしまう。
「あら、流くん。おかえりなさい」
「ただいまっス」
廊下から聞こえた後、談話室に流が入ってくる。
どこかに出掛けていたのか、手には紙袋を持っており、大きさ的に雑誌か何かだろう。
離し掛けようとする前に千尋の存在に気付いた流は、ピクリと眉を歪ませ、ぐるりと背を向けると談話室から出て行ってしまった。
「ちょ、待てよ!」
慌てて部屋を出ると走り去る流の背中が見え、直ぐにその後を追った。
相変わらず流には避けられてばかりで気分が悪い。
正直こっちはトイレでの一件を気にしていない……というと嘘になるが、気にした所でどうにかなる訳ではないので、忘れようとしている。
それなのに相手はそれが気まずいのか、それとも白谷の事で避けているのか未だに分からない。
いい加減ハッキリさせたい。
自分の部屋に入ろうとする流をすかさず走っている勢いのまま思いっきり背中にタックルし、倒れこむように一緒に部屋の中に入る。
立ち上がってすかさず扉の前に立てば、もう流が逃げる事も出来ない。
「い……ってー、なにすんだよ!」
「それはこっちの台詞だよ!待てって言っただろ!!」
起き上がった流に睨まれる。
刺さりそうなその鋭い視線に息を飲む。
(やっぱ怖い……でも、ハッキリさせたい)
「なんでオレから逃げるんだよ」
「別に……」
「別にって、なにかあるからそうやって逃げるんだろ!いい加減にしろよ、毎回毎回顔見る度に逃げられるこっちはいい迷惑なんだよ!」
ハッと口を押さえる。
思わず声に力が入ってしまった。
いい迷惑。
そう言った瞬間、流は申し訳なさそうに俯いてしまった。
違う、そうじゃない。
いい迷惑なのは、あの現場に居合わせてしまった流の方だ。
いくらホモとはいえ彼だって見たくて見たわけじゃないのに。
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