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訪問者3
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「体調悪いかな」
「ごめん、無理させちゃったね」
先生達が優しく僕に声をかけてくれた。何を言ったらいいのか分からなくてさらに顔をうつむける僕は卑怯だと思う。
そんな僕を見透かしたかのように校長先生が僕の頭を撫でてくれた。その手はあったかくて、早川先生に撫でられるのとは違う安心感がした。
「前からね、篠原くんのことは知ってるんだ。面倒見が良くて、勤勉で水泳も頑張ってるって。」
「え……」
「このあいだの大会も頑張ってたの知ってるよ」
優しい言葉。でも、大会という言葉に自然と体がこわばる。このあいだの大会、というのはあの時の健斗と別れた時のものだろう。
「あのね、篠原くん。君は頼られる側であり続ける必要はないんだ」
「…僕は」
「私はね、昔は頼る側だった。色んなことを周りに頼って来たんだ」
そろっと顔を上げると、やっぱりおじいちゃんみたいに優しい顔でこちらを見ていた。
「ある日ね、難しい英語の課題が出たんだ。その時、僕はたまたまそれが解けてね。いつも頼っていた人にやり方を教えてほしいって頼られたんだ。」
校長は思い出したかのようにフワフワと笑みをこぼした。
「嬉しかったよ。頼られるというのは、嬉しい」
「…はい」
それはわかる。僕も頼られるのはとても嬉しい。今は少しだけ疲れてるけど、でも頼られていたい。
「あのね、頼られるのが嬉しい人はたくさんいるよ。だから、君がずっと頼られる側に回るんじゃなくて頼ってあげてもいいと思う」
「頼ってあげるって…」
「本当は君に解決できることかもしれない。でも、君の許す範囲でいいから頼ってごらん。少なくとも君の友達は君に頼られたくて仕方ないって」
有紀?
彼は、僕なんかに頼られたら重くてどこかへ去っていく気がした。僕だけでも大丈夫だから、僕が少しでもしっかりしてるからみんな僕に笑ってくれたのに。
人に頼り始めたら僕は大丈夫じゃないって言ってることになる。
ぐるぐると嫌な想像が巡る。だって、頼っていたら僕はダメなのに。
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