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なんであんたなのか
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「なんで先生がかなの家にいるわけ、」
溜息をつきながら横目で先生を睨むようにして
輝はすごく不機嫌だった
久しぶりに彼方と一緒に入れると思ったら
飛んだ邪魔者が入ってきたからだ
…一応付き合っているのだろうけど
週に一度の彼方との時間を取られることは
輝にとって屈辱でしかなかった。
恋敵の相手なんだから尚更だ
「ダメですか?僕がいちゃ…」
池羽は、いつもと変わらず爽やかなままだ
恐らく輝がいるからだろうとは思うが
学校じゃなくても人がいたら
すかさず教師モードに入るのだろうか
「ダメじゃないけどさ…なんでもねーよ」
「…まぁ、輝も落ち着けって」
「うん、そうだね…」
輝は輝で彼方に止められて仕方なく歪むことをやめた
ムカつくけど仮に彼方の恋人だし
これ以上は彼方に申し訳ないからだろう
「で、先生は何しに来たの?」
「僕は彼方と一緒に居たかったから来ました」
こいつ…もう呼び捨てだと…?
仮に教師なんだから、生徒の家に来るのは控えればいいのに…なんて思うけど、
男である池羽が、男子生徒の家に上がったところで
元々問題ばっか起こす彼方だからもあるが
家庭訪問ぐらいにしか思わないだろう
だからと言って理由を知っている
輝にとってはいたたまれない気持ちになった
「で、先生?もうそのキモい性格やめてくれません?俺吐き気しかしないんで」
「…まぁいいか、ダルいしそっちがいいならそれで」
一気に表情筋が落ちたように無表情になる
彼方から聞いていたがここまでとは思っていなくて
驚きを隠せなかったけど、たしかにこれは
なにか大人の色気を感じた気がした
「仲良くしろよ、めんどくさいから」
ため息ついていい加減にしろよ
みたいな顔をする彼方に
少しやりすぎたかと罪悪感を感じた
「ご、ごめん」
「ん。」
頭をポンポンっと撫でて来る手が
離れていくのを惜しむように
そのまま台所に行く彼方の背中を見送った
撫でられた部分が熱い…そばに居たいのに
いれないなんて…
割り切ったはずなのに
そのせいで未練タラタラ気持ちがむせ返る
「お前…彼方が好きなんだな」
「は…?」
「自分より他人優先するやつか、つくづく人生損する性格だな。哀れに思うよ」
「あんた…何が言いたいわけ」
キッと睨みつけると
池羽はニヤッと笑った
舐め腐りやがって…こいつ
そう言えばかなたも言ってたか
辛辣なやつだとか…なんとか
こんな腹黒いのを内に秘めてんだから
爽やかイケメンと言われて騙された人を同情するよ
「自分の気持ちも伝えないで、勝手に失恋して一人悲劇のヒロインごっこは楽しいか?当たって砕けてえんえん泣いて次の恋に行けばいい話だ。まだ若いしまだまだこれからだろ。まぁ、俺は教え子だからって渡すつもりはサラサラないけど」
「…お前に何がわかんだよ…」
「何もわかんない」
「ならわかった口聞いてんじゃねぇよ」
「でも…わかってやる努力は出来る」
その言葉に何も言えなかった、あんな風には言ったけど先生なりに気を使っているのだろう
柄でもないことしやがって。俺が振られることを笑ってるくせに…なのにお前がいい奴なのは、嫌でもわかる。
そんなわかってしまう自分が悔しかった
「お前無口だって言ってたけど、結構お喋りなんだな」
「少し語りたくなったのかもな。昔の俺を見てるようで」
そういった池羽はどこか懐かしそうに
明後日を見つめた
生徒の家でビールを開けてのみ初めて
しんみりいっぱいやってるんだから
心底おじさんの極みだ、こんな大人になりたくない
なんて思うけど結局なっちゃうんだろうな、
なんて思って肩を震わせて笑ってしまった
「ふははっ…いいわあんた。気に入った」
「そう、それは良かった」
やっとわかった、俺じゃなくてあんたを選ぶ理由
あんたのその性格だから彼方は好きになったんだと思うよ
伝えることはやはり自分にはできないが
自分の中ではケジメを付けられた気がする
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