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9話「探した」
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「あれ?千田は?」
翌日。
昨日のことはきっちりと父さんに説教をされ、あまりサボりとかに反応しないなっちゃんには「まあ、卒業できる程度にして」とやんわりと言われた。
そんなこんなで、さっそく千田と遊ぶ約束をしようと自分のクラスである6組から、千田のいる8組まで来たのだが、姿が見えない。
「休みかー?」
教室の後ろのドアから顔を入れて中を見る。
俺の下から救馬が顔を入れた。
もちろん、救馬以外のメンバーも後ろでガヤガヤしている。
「どしたのミヤ」
「あ、西田」
西田皐月(にしださつき)。
1年の時、本原と俺と同じクラスだった女子。よく本原とつるんでいたのを覚えている。同じようにリーダーっぽい感じの、ギャルっぽい感じのやつ。
「千田いない?」
「千田?・・あ、千田くんか」
そう言って、西田がグルグルと教室内を見回す。
「よーう、どした大ちゃん」
「ん?あ、何だ沢野いんじゃん」
「え?」
西田と千田と同じ8組の沢野が、どこかに行っていたのか俺の後ろから現れて肩を組んで来た。ツンツンと立った髪がほっぺに当たって少し痛い。
「沢野、千田くんどこいったか知ってる?」
一通り教室を見回した西田が聞く。
俺も俺で沢野を引き剥がしてからそっちを向いた。
「え?あー。なに、俺じゃなくて千田ちゃん探しに来たの?さみしー」
「いいから答えろって」
「へいへい。千田ちゃんね。どこいったんだろ・・昼休みってけっこういなくなるんだよ」
「え?」
困った。
そして何故だ。
かったるそうに入口のわくに寄りかかって、沢野は一度大きな欠伸をした。
「仲いいって言っても、なーんかたまに距離置かれるんだよなー。何でか」
「?」
「けっこういなくなるし、しょっちゅう体調悪くなって保健室行っちゃうし・・千田ちゃんけっこう分かんない子」
「何それ」
「だから今もどこ行ったかわかんない。っつーか俺も探して来たとこだし」
「はあ・・・」
「なんか・・なーんか悩んでるっぽいから、どうしたのか聞きたいんだけど何も言ってくれないんだよねー」
沢野も沢野で。
人への気遣いが凄いと言うか、高校で荒れているメンバーを仕切っているだけはあって熱くていい男だ。たまに不登校の奴とかも沢野のおかげで学校に来れるようになったりするし。
そんな沢野のことだから、多分千田と仲良くなったんだろう。
今の話しを聞いた限り、昨日の千田の印象と大分変わって来る。
「千田ってそういう奴なの・・」
ガッカリ、というわけではなく。
心配になった。
「まあ、・・あのー、結構複雑みたいだから、家庭環境とかそう言うの。あんましつこくしても何だから」
どうどう、と。俺たちをなだめるように沢野が手を上下する。
それを見つつも、やっぱり行方が気になった。
いじめ、とかはないだろうけれどでも・・・心配だ。
俺も俺で家庭環境が複雑で大変な時期はあったけど、でも前に進めた。それは父さんのおかげで。
だから何かあるなら、聞いてみたい。力になれるかもしれないのだから・・でも、
(俺ってアイツの中で、そんなに重要でも、仲の良い友達でもないよな)
たった1日一緒にいただけで、俺はすごく千田が好きになったり、ずっと友達でいたいと思った。
でも千田は?
千田からした俺は?
「・・・・」
もっと仲良くなりたい。
悩みを打ち明けて、隠し事とかしない仲間になりたい。
(・・・あれ?)
沢野や、他の皆よりも、千田と仲良くなりたい。
2人の特別な関係に、なり・・たい・・?
(・・何か、変だぞ?)
何かそれ、違くないか・・?
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