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11話「困った」
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「ミヤっ!」
「うわ!!」
数日。そんな感じで千田と関わるようになった。
確かに、昼休みや放課後に連絡つかずにどこかに言ってしまうときもあるが、大抵連絡を取ろうとすれば千田はこっちに来てくれる。
付かず離れずっていう感じがした。
それでも一緒にいるのが楽しくて、俺はしょっちゅう千田のクラスに行くようになった。もともと友達は多いから、8組の他の連中とも喋るけど。
「何だよお前かよ」
「ウチで悪かったな!ねえねえミヤ!最近さ、8組の千田くんと仲いいよね?」
授業と授業の間の10分休み。
同じクラスの女子に話かけられた。2年の夏に体育大会で一緒に実行委員をやった奴、森久保志織(もりくぼしおり)だ。
「んー、まあ」
「ねえ、あの人ってさ、彼女いる?」
「は?」
思わぬ質問が飛んで来て、後ろにいる志織を振り替えしながら目を丸くした。
俺は身長がデカい分座高も高いからと、担任に一番後ろの席に座らされている。
「だから、彼女!千田くんて、彼女いる?」
しゃがみ込んだ志織がそのデカい目でこちらを見上げて来る。
俺は椅子に座ったままそっちを見下ろして、何度かパチパチと瞬きした。
千田に、彼女?
全然興味のない話題に、何故か肌がざわついた。
「ぉ、お前、まさか・・」
「え?あ、違うからね?ウチじゃなくて、ウチの友達!千田くんのこと好きな子がいてさー」
「お、おお。そうか」
「んー、でもほら、千田くんて一切そういう話しないみたいでさー。沢野くんとかに聞いても知らないって言うから、最近仲の良いアンタなら聞いてるかな、って」
ニコニコと話される。
前からそうだが、結構こういう話題が好きな奴だ。
「いや、聞いたこと無いけど」
「えー!アンタもー!?じゃあ聞いて来て!!」
「はあ!?」
「いいじゃん仲いいんだから。ウチがいきなり彼女いる!?とか言ったらやばいじゃん!!」
「いいじゃん来てくればー!俺そういう話苦手なのー!」
「知ってるよ2年の時に散々こういう話してアンタが顔真っ赤にして困ったの覚えてるから!」
「忘れていいからそういうの!!」
「やだよ。面白かったもん」
「あーもう!!」
顔に出やすいと言うだけだ。
誰が誰を好きとか、自分が誰を好きとか、そういうのが。
誰かに話すと恥ずかしくて、すぐに顔に出る。そういうものなだけだ。
「ねえ聞いて来てよ!あ、ちなみにアンタは今いないの??好きな人!」
「いない!!」
前に好きだったのは違うクラスの子。だけど付き合って四ヶ月くらいでこっちからフッた。性格的に合わなかった。
それ以外にも何人かと付き合ったこととかはあるけど、でも別に。これといって何ともなく別れた。
「なんだつまんない。ねえお願いお願い。聞いて来て!」
「やだって」
「何で!志織のお願い聞いて・・?」
「キモ。むり」
「はあ!?ねえお願いだから!!ねえ!!」
とうとう肩を持たれて前後に揺さぶられる。
俺は「あ?あ?」と言いながらされるがままになっていた。
「お、ね、が、い!!」
「い、や、だ!!」
「な、ん、で!!」
「な、ん、で、も!!」
「宮崎ー!」
「ん?」
「え?」
俺が呼ばれたと言うのに、志織までドアの方を向いた。
聞き慣れ始めた声。
直ぐさま反応すれば、教室の後ろのドアのところに千田が立っていた。
「ぁ、ち、「千田くんじゃん!!ねえ!!ねえお願い!!」やなもんはやだ!!」
10分休みにこっちに来るなんて珍しい。
肩を掴んで来る志織の手を振り払ってさっさと立上がる。
その瞬間、ふわりと志織のシャンプーか何かの匂いがした。
女子っぽいそれ。この間書いた千田とは違う匂いだった。嫌いじゃない。でも、千田の方が何だか・・・優しくて、いい匂いだったように思える。
「どしたー、千田」
「ごめんあのさー、アレ持ってない?えっと、電子辞書」
「あ・・ごめん。あるんだけど、電池切れ」
「あー、マジか。いや、お前悪くないから。どうしよっかな」
「千田くん私持ってるよ!!!」
高い声が飛んで来る。
振り向けば、後ろで志織がニコニコしていた。
「し、志織」
「私がかしてあげる?」
一旦自分の席に戻ってから、志織が電子辞書を持って帰って来る。
ニヤリと俺を見ながら通り過ぎた。
(なんか、こう・・・脅しのようだ)
代わりに千田にかしてやるからお前は例の件を実行しろ。
みたいな威圧感。
たいな視線。
みたいな含み笑い。
戸惑いつつ志織から電子辞書を借りる千田を見る。
スラッとしてて格好いいし、顔はもちろん良い。モテるだろう。こんな俺だって彼女は何人か作れたんだから。千田なんか両手に華どころじゃない時代があったはずだ。
(ぅうむ・・)
聞くのは、別に、まあ。
いいんだけど。
千田とそういう会話をしたことがないから、こう・・
(気まずくなりそう)
そう思った。
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