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51話「走った」
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例えばどうして、その人を好きだと自覚したのだろうか。
例えばどうして、その人といたいと思うようになったのだろうか。
例えばその人と、どうしたいのだろうか。
俺は歩いた。
翌日、学校までの道をただひたすら。
昨日と同じ早めの登校。
昨日と同じで何故か救馬が現れ教室まで向かって、そうして昨日と同じように窓の外を眺めて待った。
千田を待った。
(やるぞ・・・やるぞ・・!!)
ある決意を胸に。
ただひたすらに、待つ。
「・・・いや、何かすげー怖い顔してるよミヤ」
救馬が引き気味に言って来ても気にしない。
俺はやらねばいけないから。
「おう」
「いや、おう、じゃねえから。どしたの・・」
「別に」
「そのすごみのある顔で別にはないっしょー」
昨日と同じように俺の机に肘をついて顎を乗せ、呆れたように救馬は言った。
昨日の夜、父さんと話してある決意を固めた。それから、何か・・何か興奮して結局眠れなかった。
色々頭の中で考えていると、いい方へ行ったり悪い方へ行ったりと忙しくて。それに翻弄されて、いい気分になったり悪い気分になったり。俺は気分屋でころころ機嫌が変わるし、その辺はよく面倒だと言われる。テンションが高いときと低いときの差がありすぎるとも言われる。そんなんだから、こうして、ポジティブでいい感じの考えに向かっているときに決意して、全て済ませてしまわないといけない。
だから、
昼休みやら放課後やらまで待っていては行けない。
今だ。
朝だ。
授業始まる前に、全部終わらせてみせるんだ・・!!
「あ、来た来た」
「!」
その声に、窓から見える正門の更に前、道の先を見た。
外は穏やかに風が吹いているらしく、ふわふわと木々が揺れる。それを視界の端で捕らえつつも、俺はやっぱり一番にアイツの姿を見つけた。
千田。
千田愛の姿を。
「行って来る」
「ん、いってら・・・・え?ドコに、ちょ、ミヤあ!?」
救馬が何か叫ぶのを遠くで聞きながら、椅子から立上がって全力で走り出す。
向かうは玄関。
というか、正門。
階段で数人に「あ、宮崎おはよー」と声をかけられそれにテキトーに返事をしながらダダダっと降りて行く。体だけはデカい俺の足の長さ的に、一段飛ばしが丁度いいくらいで。ばったんばったんと足音を響かせつつ、下まで降りて。
踏み外さないよう1階まで降りると、また全速力で走る。
「千田あああああ!!」
そして。
叫びながら玄関を出て、校舎用のサンダルのまま正門まで突っ走って行った。
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