アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
⑤
-
「んー?」
ニヤニヤした透琉だった。
歩はこの顔を知っていた。これは、いじる気満々の人の顔だ。けど、これも知っている。こういう表情をする人は、大概自分の思っているような、偏見を持っていないことも。
「いやー。まさか、2人がそういうのだったとはね。あ、俺同性愛とかそういうの偏見ねぇから安心して」
「はぁ」
「そうだ! 今日はお前ら以外店来ねぇし、ここで思う存分イチャイチャしていいぞ」
「誰がするか!」
「ふーん。……歩がケチャップ舐めたとった時のリクトの顔、真っ赤で面白かったのになー」
「透琉、ちょっとツラ貸せ」
「いいぜ」
「ちょちょちょ!」
本気で喧嘩をしそうな2人を歩は慌てて止める。ここで喧嘩されたら、自分では止められる気がしない。なにか、気を逸らすものを。そう考えた歩の鼻腔を擽ったのは、甘い香り。
「そうだ、デザート! 透琉、デザートどうなりましたか?」
「あぁ。歩の方は出来たぞ、ほら」
「ありがーー」
透琉から皿を受け取った歩の声が不意に途切れる。しかも、皿をそっと机の上に置いたかと思ったら、下を向いて震え出し始めた。
何かあったのだろうかとリクトが口を開こうとした直前、歩はガタンと椅子から立ち上がると。
「透琉氏! そなたは神か!!!!」
「うお!」
がしっと、透琉の手を掴んでいた。
「どういうこと?」
「あー。多分、それのせいだろうな」
未だに歩が手を離さないため、視線でパンケーキをさす透琉。その視線を追ってパンケーキを見たリクトは目を見張った。
「これ、今日のフィギュアのキャラクターじゃん」
「パンケーキアートってやつ。前にきた客に頼まれて作ったことがあるんだよ。俺がマジカルみーな♡を知ってたのはこれのせい。歩も好きみたいだし、喜ぶかなって」
「感謝感激雨あられです! こんな近くに神の手を持つ方がいたとは! 是非とも他のキャラクターもお願いします!」
「分かった、分かったから、リクトのやつも出させろよ」
「俺のもパンケーキアートとかいうやつなのか?」
「甘いの苦手って言ってたから、珈琲風味。ほら」
「…………」
透琉から皿を受け取ったリクトは、ぴしっと固まった。まるで一時停止を押されたかのようだ。
「リクト?」
「……」
歩同様、皿をテーブルに置いたリクトは次の瞬間。
「透琉! てめぇ!」
目を吊り上げ、思い切り机を叩いた。その怒りを向けられている相手は、ニヤニヤしていたが。
「いやー。お前の好きなキャラクター知らねぇし」
「なら普通にパンケーキ焼け!」
「それじゃ面白くねーじゃん」
カウンター越しに透琉へ殴り掛かるリクトの顔は真っ赤だ。何をそんなに怒ることを描かれたのだろうか? 気になった歩は、リクトの皿を覗き込み、目を見開いた。
パンケーキに描かれていたもの。それは、自分とリクトの似顔絵と末永くお幸せに♡ という文字だった。
どうやら、リクトは照れ隠しをしていただけだったみたいだ。今度は店内で追いかけっこを始めた2人に、歩は呆れた顔をする。喧嘩よりはいいが、これもこれで如何なものか。
「透琉、大人しく一発殴られろ。それでチャラにしてやる」
「照れるなって」
「照れてねぇ!!!!」
→おまけ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 6