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全身から力が抜けていくのを感じた。
座り込んでしまいそうになるのをなんとか堪える。
でももう黒尾さんを直視することはできなくなっていて、僕は俯き目を閉じた。
死刑判決を待つ死刑囚のような気分だ。
「嘘つき」
想像していたのとは違う言葉に、僕は思わず顔をあげてしまう。
「好きって言って。頼むから…」
黒尾さんの懇願するようなか細い声。
僕の心を掻き乱すあの鋭い目じゃなくて、酷く傷付いた捨て猫のような目をした黒尾さんがそこにいた。
「泣くなよ…」
笑いながら、僕の濡れた頬を優しく指で拭う。
泣くなと言いながら、黒尾さんの方が泣いてしまうんじゃないかと思うくらいの見たこともないような表情をしていた。
「月島」
頼りなく、悲しく、そして甘く僕を呼ぶ。
頬に置かれた指は微かに震えているのを感じ、胸が締め付けられた。
恐る恐る黒尾さんの指に触れてみる。
それが合図だったみたいに、黒尾さんは僕の手を包み込んだ。
その温もりにまた涙が溢れる。
「っ……ずっと…」
「うん…」
黒尾さんの反対の手が僕の髪を優しく撫でてくれていて、都合の良い夢なんじゃないかと思った。
でもそれでも構わない。
目が覚めたら、少しの幸せを感じながら落ち込む朝が来たとしても。
伝えなきゃいけない、伝えたい。
「すき……っで…」
言い終わる前に強く抱き締められる。
「捕まえた」
黒尾さんが耳元で熱っぽく囁いた。
あの日、あの瞬間から。
僕の心はあなたに囚われたままだった。
それを伝えるのは、もう少しだけこの温もりを確かめてからにしよう。
僕は黒尾さんの背中に、宙ぶらりんだった腕をそっと回した。
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