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俺の会いたかった人-3
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角松の好意に素直に従って彼のあとを付いていくことにしたのだが、さっきまで居た福島堂から10分もしない所に彼の家はあった。
メインストリートを一つ奥に入っただけなのに、そこは静かな住宅街になっており、生活感のある風景に驚きながら、親父の住む街を目に焼き付けていた。
洋風な顔とはかけ離れて見るからに和風な家に入ると、期待を裏切らない純和風の部屋に通された。某国民アニメに出てくるような丸いちゃぶ台に座ると、お寿司屋さんでよく見かける漢字だらけの湯のみが前に置かれた。壁には幾つもの提灯が飾られているので、お祭り好きなのかもな。
「俺は角松だ。郁人……君の親父さんの同居人と言ったところだ。足は崩して楽にしろ」
慌てていたので気が付かなかったが、綺麗な空色の瞳をしている。思わず見とれていると百瀬に服の袖を引っ張られてしまい、気まずくなったのでニヤリと笑っておいた。
「……あの、俺、何から話していいのか正直まだ混乱してて」
突然口下手になった俺に角松はそうだろうなと肯定し、じゃあまずは俺と郁人の出会いから話すかと言って、親父の背中をバシンと叩くと大きな声で笑った。
「ジジジジジジッ」
なんの音だ?俺と百瀬がキョロキョロしていると、角松がこの家は古いからな、呼び鈴だよ、と苦笑いしながら玄関へ歩いていった。
そして部屋へ連れて来た美中年は、俺たちの学園の理事長である藤沢凛太郎(ふじさわりんたろう)だった。俺と百瀬は目を丸くしている。
「偶然にもいい所に来たぜ。藤沢も絡んでるんだ。だから俺たち三人で、今までのことをザックリ話すとすっか。言っておくが結構濃いぞ」
驚いてる俺たちを見て、角松が大袈裟に肩を竦めた。
今日は色々なことがあり過ぎて、いちいちリアクションをするのも面倒になった俺は、今だに間抜けな顔をしている百瀬の頬をつつくと、話を聞く体制を整えた。
それから俺たちは、藤沢理事長がお土産に買って来た『一番亭の豚まん』を遠慮なくかぶりつきながら、昔話を聞くことになったのだ。
百瀬はやたらと俺にくっついて来るので、やつなりの優しさだと受け止めて、ピッタリと寄り添った。
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