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迷いのない風
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人生には選択が付き物だ。
いくつもの分かれ道から選べるのはたったひとつの道だけ。
一度選んだら巻き戻しなんてできない。
沢山ある分かれ道の中から、アナタを選んだこと、アナタに選ばれたこと。
それだけで奇跡と呼んでも不思議じゃないよね。
ポツポツと降り出した雨に、喫茶店の窓の外は少し慌ただしくなる。
足早に駆け出す人々を見ながら、憂鬱そうに溜息をついた名瀬。
「降ってきたね」
「そやな。傘あるで?」
「相合傘?」
「...車までな」
一瞬断ろうと思ったが、流石に濡れて風邪でもひかれたら大変なので入れてあげることにする。
雨が酷くならないうちに...と会計を済まし、カバンから折りたたみ傘を取り出す。
「ちっさ!」
「文句言うな」
駐車場までは走ればすぐだ。
背の高い名瀬が傘を持ち、駆け足で車に向かう。
少し濡れたが、そのまま車に乗り込んだ。
「濡れてない?」
「ちょっとだけ。名瀬は大丈夫?」
「俺もちょっと、かな」
珍しくオフが同じ日で、久しぶりにデート(...と言っても馴染みの喫茶店でお茶だけど)だったのに。
車に乗ると本格的に降り出した。
視界が見えなくなるくらいの雨に、今運転するのは危ないと、駐車場で待ちぼうけ。
「慌てないで店にいたらよかったね」
「ん~...でも周りが見えへんから、車の方がいいかも」
そう言った俺を不思議そうに見る名瀬。
その唇に軽くキスする。
雨がカーテンとなり、誰にも見られることは無い。
ーま、これ以上の事は無理だけど。
雨が弱くなるまでの少しの時間、触れるだけのキスを何度もした。
「普通の恋人同士みたいやな」
日常生活ですら人目を避けて過ごす毎日。
街中で二人で歩く何ていう普通のこともなかなかできない(出来ないことは無いが、周りが煩い)。
家の中でしか仲良くできない俺たちは、この非日常を楽しんだ。
雨足が弱くなり、家に帰る。
身体が冷えてたので、シャワーを浴びてからリビングでまったりと過ごす。
抱きしめられたその腕の温もりに幸せを感じて、自然と笑みが零れた。
深く繋がるだけが愛ではない。
「洸ちゃん、好きだよ」
「...俺も、好きや」
交わし合う愛の言葉は、もう何度も聞いているもの。
それでも毎回嬉しくて、心の奥に染み渡る。
こんなにも大切に思える人は、もう今後出逢うことは無いだろう。
これからも幾度となく選択しなければいけない場面があるけど、彼の手だけは離さないようにしたい。
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