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呪い
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死期の近づいた人間の魂を狩ることが本当のお仕事で、それを人間に悟られてはいけない。
死神界の掟ってのは意外と厳しくてね、でも、俺は凡人もいいとこななおに一つ、賭けてみた。
「先生がすき」
真剣な眼差しで、僕にそう告げた子供に、希望を賭けてみたんだ。夢を賭けてみた。
かれこれ、俺はもう三百年以上地上にいる。人間の魂の残りカスを喰らって、存在している。ただ、存在を続ける必要性がよく分からないでいた。俺は人間に紛れて生きている。周りは成長して、年老いて、最期は俺に魂を狩られて死んでいく。俺を置いて、みんな死んでいく。…俺が、奪うから。ナカミを奪ってしまえば、ウツワも死ぬのは当たり前だ。サヨナラばっかりだ。これは、寂しい。寂しいな。
死神には必ず狩場が与えられてね、その狩場以外の人間の魂を喰らうことは大禁忌。だからこの地区は俺のテリトリーで、この地区で死期の近い魂は全員俺の餌食になる。そうやって生きながらえてきた。人間が動物を食うのと一緒で、死神は人間を喰う。それが自然の摂理でさ、だから俺たちは何かに終わりがくることを知らない。半永久的に存在していられるから。
終わりというものは、一体どんな気分なんだろう。感じたことがないから分からないけれど、きっと凄く悲しいんだろう。だって人間は死に際にね、必ず後悔するんだ。必ず涙するんだ。魂がね。身体ではなくて、魂が。
だから俺は見てみたい。笑って安らかに眠る魂を、見てみたい。
なお、なら。もしかしたら、と、別にとくに意図はないんだけど、確信もないんだけど、なんとなく俺に見せてくれるんじゃないかと思ったんだよ。なおの撮った写真より綺麗な、綺麗な魂を。その羽根を折りたたんで、笑ってくれるんじゃないかなと。
だからなおに小さな呪いをかけた。胸の上のカウントダウン、それはなおの魂の終わりを知らせるもの。
わざわざ夢にまでお邪魔して、知らせてあげたんだ。…ほんとはこれ、禁忌もいいところなんだけど。
人間に、死期を悟られてはいけない。掟破りがバレてしまえば俺は。…。
まぁ、いっか。なんとかなるでしょ、多分ね。なおの胸の数字は150にまですり減っていた。…なお、気づいて。キミに来週の月曜日はこないんだよ。
なお、どうか後悔をしないように、最期を生きてよ。
そして笑ってみせてよ。
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