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先生の金髪は目立つ。綺麗な糸だな、指を滑らせてみたいな。
この胸の数字が、死へのカウントダウンなら。単純計算して俺の命はあと一週間もない。それなのにどうしてこうも落ち着いてるのかな。
あと一週間しかない、一週間でなにをしよう?普段通りに飯くって、最近仲良くなった友達と喋って、先生のことを目で追って、そんで一日が終わっちゃったんだぞ。きっと明日もこの調子で終わる。明日も、明後日も、ずっと。
前に先生に見せた写真は、俺が先生を好きになる前の写真だった。ありきたりな風景ばっかり、なんの被写体もない日常ばっかり。そんな写真を先生は、宝石みたいな目をキラキラ輝かせてはしゃいで眺めていた。
昔から写真がすきですきでたまらなかったのは、その時見た全てを焼き付けることができるから、だ。
でも、人間は撮らなかった。人間に限っては、その時見た一瞬しか焼き付けられない。考えてもみてよ、記憶は薄れるんだ。昨日のことを全て同じ視点で思い出すことなんて出来ないだろ、それが嫌で、嫌で、この世界は綺麗だ。綺麗だから、思い出したいから、シャッターを切る。
切ってきた。
先生、先生。先生を好きになって、ずっと胸が苦しいんですけども。それこそ、最高のシャッターチャンスを逃したときより苦しいんですよ。おかしいですかね?
俺は世界が好きだ。青い空も赤い空も灰色の空も藍色の空も、電柱も小鳥もビル街も横断歩道も道に咲く花も人混みも、全部好きだ。
でもそれより好きなものができてしまった。それより綺麗だと思うものができて、しまった。
先生の髪がすきだ、白い肌がすきだ、淡い瞳がすきだ、柔らかい声が、彼の感性が、彼の俺を撫でる手のひらが、彼の全てが、この世界のなによりも、綺麗だと思う。
だから、今、俺は。もしあと一週間しかこの世に居られないとするなら、俺は。この写真機を先生でいっぱいにしたいよ。それだけだよ、望みなんて。
俺がアンタに恋をした、叶わなくたって全然構わない。死ぬ時まで、この目で、このレンズで、アンタを見つめていたい。
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