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担任に職権乱用という名のセクハラを受けつつも、なんとか一限目は免除して貰うことが出来た。代償は大きいがな。そして放課後、一旦伊織と話そうと自分の部屋へと戻る。
「おかえり、千梨」
「ただいま。…ちょっと話があるんだけど、良い?」
「…うん。何?」
「伊織は、日高先生ともう一度話したいと思うか?」
「…慧と?何で?」
「俺の体を介して話す事ができるかもしれない。もしそれで未練を無くす事が出来たら、伊織もここから離れられると思う」
「何でそこまで…君にとってはどうでもいい事でしょ?」
日高先生と同じことを言う伊織に、少し笑ってしまう。どうでもいい事か。確かに、最初は俺もどうでも良かった筈なのにな。自分でも呆れてしまうほど情が移ったと思う。
「…ごめん。全部俺の自己満足なのかも知れない」
「…?」
「それでも伊織には、あんな想いを抱えたままこの場所に留まって欲しくない」
夢で感じたものは本当に一部でしかないが、それでも苦しかったのだ。伊織は今もそれ以上に苦しい思いをしているのだろう。少しでも和らげばいいと思うのはただのエゴだろうか。
「…良かったのに」
「え?」
「こんなの、当たり前だったのに。何年もこの場所から離れられなかったのは慧を忘れられなかったからで…だから、慧がこの学園にいる限りは絶対に離れられないんだと思ってた。誰にも見られずに誰とも話せなくて、こんな思いをしてたってそれは仕方ない事だって。でも、それでも良いと思ってた。だって、僕はもう死んでるんだから」
そう言う伊織の声が段々と震えている事に気が付いたが、何も言わずに見つめ返す。
「理不尽だろうと、どうにも出来ないこともあるんだって…当たり前だって諦めてたのに。それなのに君は、僕に…」
「…伊織」
「慧と、話したい」
伊織は出会った時と同じように、ボロボロと涙を零す。
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