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「 そういえばうちのクラスにも桜木って名前の奴いたよな 」
「え〜、そうだっけ?」
「 いるよ!その人も去年の入試首席だったって聞いたよ!」
「 うっそ、まじ?もしかして兄弟だったりして..... 」
「ほら、あいつ....... 」
先生が教室に上がってこないのをいいことに、
未だぺちゃくちゃとおしゃべりをする続ける集団の目がこっちに向けられた気がした。
そして訪れる一瞬の沈黙。
そういうのほんとやめてほしい。
そうやって勝手に期待して、この後 残念とか思うんだろ。
はっきり言って俺はこの教室では目立たない存在だ。
成績が良かったのは最初だけで、千里に勝てないことを実感した俺は勉強も部活もやる気をなくし、今ではなんにおいても
中の下といったところだ。
頑張ったって何のいいこともないから努力するだけ無駄。
そんな簡単なことに気づいてしまったものだから、手を抜きに抜きまくって適当に毎日過ごしている。
だから、クラスのみんなの俺への認識は「村人A 」みたいな
感じで、特に気にもされなかった。
俺もそれが気楽で良かった。
頑張っても頑張らなくても結果が同じなら、人間やっぱり楽な方に進みたいものだ。
だからこのまま差し障りなく高校生活を送りたかった。
だがしかし
つい最近千里が入学してきたせいで、その注目は兄である俺にも注がれることになった。
幸いなことに、俺と千里が兄弟ということを知っている人物は
あんまりいないが、名字が同じ2人が首席合格者だということは結構知れ渡っているらしく、多少はうちの学校の生徒を騒がせているそうだ。
これから千里がこの学校で色々な成績を残して、活躍して、
もっともっと注目されファンも増えるはず。
そうなったらますます俺の肩身が狭くなる。
血が繋がっているだけで比べられ、息苦しい生活を強いられてきたのに、おんなじ学校なんてありえない。
近くにいたら余計に比較対象になるだけだ。
千里は何にも分かってない。
みんなにちやほやされてるあいつには、比べられ鼻で笑われる俺の気持ちなんて分かんないんだろうな。
もういっそのこと、引き立て役として使ってくれればいいものを........。
「 えぇ〜、あの桜木くん?」
「あの人って頭良いの?」
「 ........遺伝子って不思議だねぇ。」
ほら、嫌味ばっかじゃん。
っていうか聞こえてるって知ってんのかな。
目合わせたらどんな反応するんだろう。
もうどうでも良いや。
「 あー、でもよく見たら顔似てるよ。」
「 でもいつも下向いてるから顔分かんなくない??」
「確かに〜 」
うるさい。重たい。煩わしい。
なんで人はすぐ何かと比べて定義付けしたがるんだ。
それしかすることないのかよ。
息がつまりそう。
「ん〜あたし、年下に興味無いけどぉ〜、千里くんとなら
付き合ってみても良いかもー!」
「 キャハハッ、何言ってんのあんた!」
「だってそんなハイスペックな彼氏欲しくない??」
「まぁね〜」
ボスキャラ女子が意味不明な発言をすると、それに対して
すかさずツッコミを入れた女子の笑い声が耳を劈く。
頭がキンキンするような耳障りな高い声。
なぁ、千里。
お前自分の知らないトコで名前も知らない女の彼氏候補に
なってんぞ。
良かったな。
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