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「 涼、起きて。.......ついたよ。」
静かに肩を揺らしてくる千里の言葉で
ハッと目が覚めた。
学校から家まで送ってくれてる途中で睡魔に襲われた記憶があるが、よく覚えてない。
ゆっくりと目を開けて顔を上げると、心配そうに眉を下げる
担任と目が合った。
.......俺は寝てしまってたのか。
「 おいおい、お前熱上がってんじゃねぇのか、顔あけぇぞ 。」
先生が運転席から後部座席に座る俺の方に身を乗り出して
額に手を当ててくる。
たしかにさっきより体が怠く頭痛も増してきた。
ゾクゾクとした悪寒のようなものが背中からうなじまで駆け上がってきて寒気が止まらない。
先生の言う通り、熱が上がったのかも。
でもそう思ったところで1度や2度もたいして変わらないし、
時間とともに治るだろう。
「 .......大丈夫です、ありがとうこざいました。」
ペコリと頭を下げる。
荷物を肩に下げ、車を降りようとドアに手をかけた時
先生が頻りに腕時計を確認していることに気がついた。
「 .......なにか予定があるんですか?」
俺が声をかけると、先生はこちらを振り返りニヤッと笑った。
しーっと長い人差し指を立てて口元に当て、
「 内緒 」と小さく呟く。
不敵なその顔を見て、やっぱり予定があるんだと察した。
自分の所為で人のスケジュールを狂わせてしまったと思ったら
申し訳なくて、送ってくれなくても良かったのに.......と
思ってしまう。
極力人に迷惑はかけたくないのに。
「 .......ごめんなさい。」
もう一度深く頭を下げると、先生は俺の考えを悟ったのか、
慌てたように首を振った。
「 いやいや、大丈夫だって。お前はなにも気にせずゆっくり
家で寝てろ.......そんでちゃんと学校こいよ。」
「 .........はい、ありがとうこざいます。」
千里が、俺の肩に掛けていた荷物を持ってくれて先に車を降りた。その後に続いて車から降りると、地面に足がついた瞬間
ふらっと目眩がした。
静かなエンジンの音がして車が去って行ったのを見て、
なんだかほっとする。
「 .......帰ろ。」
そう言って千里が俺の手をぐっと引っ張る。
「 .......手、痛いんだけど。」
「 あ、ごめん。」
謝ったのに手の力弛めないってどういうことなんだよ。
そんなに力強く掴んでくれなくてもどこにもいかないのに。
なににビビってるんだか。
千里が家の鍵を開けて、一緒に中に入る。
電気がついていない真っ暗な廊下が伸びて、いつからこんなに家に帰るのが鬱になったんだろうと思う。
靴を脱いで玄関から上がろうとすると、
不意に背後から伸びてきた手に引き止められる。
そのまま腰に回された手に力が込められた。
普通に苦しい。
「 ....... なに、」
「 .......俺、怖かったよ。涼もともと暑いの苦手なのに.......
あんなとこにずっといて、全然目ぇ覚まさないだもん .. 」
「 ..............離せよ。」
「 やだ。」
背後から伸ばされた手に顎を掴まれ、半ば強制的に千里の方に首を向ける。
「 う、んっ、....... 」
そのまま唇を塞がれて、呼吸が詰まる。
あぁ、またか。
コイツはなにがしたいんだ。
「 ん、ふぁっ、....ぁ .....ん" 」
差し入れられた舌に嫌悪感を抱いて、
反射的に体を押し返し唇を離す。
急に離したことにより歯が当たったのか、千里の唇の端に微かに血が滲んだ。
その血をペロッと舐めながら無表情で見つめてくる
千里と目が合うと、もう一度顔を近づけてきた。
「 や、やめて。」
「 .......なんで?」
本当に不思議そうに首を傾げて聞いてくる。
「 今日はしないで。.......疲れてるから、ほんとに。」
怖くなって目線をそらしてみても、回された腕は解けない。
それどころか力は強くなり、胃が締め付けられる感覚に顔を歪ませる。
「 俺、涼のことすっごい心配したんだよ?」
「 で、でも....... 」
俺にそんなこと言ってもいいの?
とでも言いたげな表情で見下ろされ、なにも言い返せずに
言葉が詰まる。
「 母さんたちには、今日のこと上手く説明してあげるから 」
母さん、という単語にぴくっと体が反応した。
帰ってきたら絶対になにかしらの小言を言われると思ってた。
だけど基本的に千里には甘いから、千里が気の利いたフォローをしてくれれば少しは親の怒りも収まるだろう。
きっと、千里はそんな俺の考えを見抜いてる。
俺が千里に逆らえないのも。
「 ......一回で終わらせてくれる.......? 」
はぁっと溜息をついて顔を上げると、千里はにっこり笑うだけで答えてはくれない。
一回じゃ終わらないってことか。
体が一気に重たくなる気がした。
いつまで俺はこいつに縛られるのか。
底なしの沼にグズグズはまっていくような。
出口のない迷路に迷い込んだような。
そんな、終わりも出口も無い色々な感情が心臓から浸み出して息が出来なくなる。
苦しい。逃げ出したい。
「 早くしよ、母さん達帰ってきちゃう。」
そう言って俺の手を引く千里の背中はどこか楽しそうで。
そのまま俺の部屋でベットに押し倒されたって、
表情1つ変えない俺たちは、お互いに頭のネジが足りないんだろうな。
嗚呼、退屈。
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