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あれから熱はズルズルと37度台をキープし、
学校に行けたのは2日後のことだった。
食欲がなくて、2日間スポーツドリンクだけでなんとか
体力を保たせた。
汗をかきまくって体の水分はどんどん体外に出て行くし、
気分が悪くなって吐こうと思っても、腹から出るのは胃液だけでお腹の中のムカムカは治らない。
ほんとは今も少し熱が残っているのだけれど、進級したばかりだし極力欠席は避けたかった。
だるい体を引きずって学校に行く。
千里とは、いつも登下校の時間をずらすようにしている。
なるべく隣に並びたくないからだ。
今日の朝も、一緒に学校に行くと言って聞かない千里を
おいて、さっさと家を出た。
多分帰ったらまたなにかされるんだろうなぁ。
俺の身体が辛い状況でも御構い無しだから、あいつ。
俺が熱でふせってる間も、夜になると部屋にやってきて
無理矢理犯された。
昨日は特に酷くて、辞めてもらおうとしても熱の所為で
体に力が入らなくて抵抗なんかできなかった。
嫌がったり拒絶したり少しもしなかったのに、
千里は俺を押さえつけて乱暴に抱いた。
おかげで体のあちこちにアザみたいな青黒い跡ができて、
それを見られないようにキュッと縮こまって歩く。
頭も喉も痛いし、腰も辛いし、なんかふらふらする。
どんよりと気持ちが沈む。
きっと俺は側から見たらすごく酷い顔してるんだろうな。
だってしょうがない。
精神的にも身体的にも色々とまいってるんだ。
なんだか視界がぼやけて、体の重心が定まらないような気がするけど気のせいかな。
一歩一歩足を踏み出す度にグラグラと眩暈がして
頭が痛くなる。
.......大丈夫、大丈夫。
呪文のように頭の中でとなえながら学校の階段を上がる。
なにも怖いことなんてないのに、教室の前に立つと何故だか扉を開ける手が止まる。
なにか余計なこと聞かれたらどうしよう。
また変な目で見られて嫌味とか言われたらしんどいぞ。
はぁ.......めんどくさい。
気が進まないけど、ため息をつきながらガラっと教室の扉を開ける。
いつものようにおしゃべりを楽しんでいる女子グループのメンバーや、教室にいる人たちの視線が一斉にこちらを捕らえた。
さっきまで廊下に響くほどの大声で会話をしていた声も、
俺が教室に入るなりしんと静まり返って嫌な沈黙が流れる。
うぅ.......胃がいたい。
ちょっと無言のあと、集まっていた何人かの生徒が俺に向かって「おはよー」と声をかけてくれた。
「 あ、あぁ.......おはよう。」
「 この前どうしたの〜?行方不明になってたじゃんw」
「 え、えっと.......ごめんね、色々と。」
「 ま、別に良いけど〜、授業時間潰れたし!!」
あはは、と苦笑いして軽く流した。
良かった。
俺が体育倉庫の中に閉じ込められたのはそれほど生徒たちの間で広まっていないのかもしれないな。
色々とめんどくさいことにならなくてよかったと安堵する。
ほっと息を吐いて、自分の席に着こうした時。
「 桜木 」
俺の知ってるよく通る声で名前を呼ばれた。
振り返ると、不機嫌そうに眉間にしわを寄せ両腕を組んで立っている白石君がいた。
「 ......おはようございます 」
「 ございます、じゃねぇよこの野郎。この前一方的に電話切りやがって.......あの後何回かけなおしても全然でないし。
なんか大変なことになってんのかってすげぇ心配したんだぞ」
あぁ、......やっぱりその話題か。
正直なところ、今思えばあれはかなり恥ずかしい。
熱で弱ってたとはいえ、高校生にもなって泣いてしまった。
できれば触れて欲しくなかったのにその話を持ちだされて
なんて言って良いのかよく分からなくなった。
「 ごめんね、本当に大丈夫だから。.........心配してくれて
ありがとうね。」
「 ありがとうって.......ったく、このあほ。」
え、お礼言ったのになんで俺罵倒されてんの。
確かにさっさと電話切ってそのあとも無視極めてたけど
直接迷惑はかけてないじゃんか。
俺なんかに話しかけてくる白石君の方があほだよ、あほ。
戸惑って上目遣いで見上げると、白石君はフッと目線を落として、なんとなく悲しそうな顔になった。
「 お前.........痩せたな。」
「 .......そうかなぁ。」
この3日間ほとんど食べ物を口にしてないから、確かに体重は
減ったと思うけど、どうしてそれで白石君がそんな顔をするのかが分からない。
「......ちゃんと飯食ってたか?」
「 た、食べてない。」
俺が答えると、白石君は「はぁっ?」と言ってまた不機嫌そうな顔になった。
俺の頬をむにっと摘んできて、
「 もともと細いんだからちゃんと食えよ!」と
お母さんみたいなこと言ってくる。
まぁ、お母さんにそんな事言われたの一度もないんだけどさ。
「 別に、白石君に関係ないじゃん...... 」
離してよ、と言って、俺の頬を摘んでいる白石君の手を
パシッと振り払う。
すると。
「 ......っ、」
特に強い力で叩いたわけでもないのに、
何故か白石君は眉間にしわを寄せて小さく声を漏らした。
なんでだろうと思って白石君が目線を落としている方と同じところに目を向ける。
.........あ、しまった。
さっきまで袖を引っ張って隠していたのに、腕を上げたことによって俺の手首が露わになっていることに気がついた。
昨日千里に縛られた所為で青黒く変色した
アザがくっきり残った俺の手首が。
なるほど。これに驚いてたのか。
白石君は一瞬大きく目を見開いて、ギョッとしたような顔で
俺と俺の手首を数回見比べる。
慌てて袖を引っ張って手首を隠し、背中に回して見られないようにしたけど、きっともう遅い。
くそ、失念してた.......
「 な、なぁ、お前それ....... 」
白石君の顔が引きつってる。
あぁ、もうめんどくさい。
こんな人がたくさんいるところでそんな顔したらダメじゃん。
案の定、周りの人たちが「なになにー?」みたいな感じで
俺らの方に注目してる。
「 桜木、....... 」
「 なんでもないから。」
何か言いたそうにしている白石君を無視して席に着く。
進級したばかりだから机は出席番号順に並んである。
そうなったら「桜木」と「白石」で必然的に
席が前後になるわけで。
後ろから痛いほどの視線を感じる。
どうしようかなぁ。
頭の中でぐるぐるといろんな考えが湧く。
何か聞かれたらどうやって答えよう。
まさか本当のことなんて言えるわけない。
でも普通の怪我とは違うから誤魔化しようもないし。
何か丁度いい言い訳も全然思いつかなくて。
ただでさえ遅れをとった授業は全く頭に入ってこなかった。
そして。
4時間目の授業がある終わって昼休みが始まる頃、
白石君に「 ちょっといいか 」と言われて人気のないところに呼び出されてしまった。
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