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渓谷の仙人⑤
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夕方5時、今日も一日が終わり、今日はエリックが店内の掃除担当だから俺も明日の材料の買い出しもあるしで先に帰ってきていた
アパルトマンの4階にある部屋
鍵を差し込んで部屋を開けると、夕日が差し込んで茜色に変わっていた
エプロンをして、手を洗い野菜を切る
鍋に火をかけ買ってきた食材を煮込んでいく
今日はポトフにするつもりだ
あとは少し煮込むだけ、あぁ…デニッシュを
買ってくればよかったと失敗した。
エリックに帰ってくるついでに頼むか、
そう思って電話をとった瞬間、着信があった
知らない電話からだ
「…Hello?」
『もしもし…菅原春さんでいらっしゃいますか?』
若い女性の落ち着いた日本語が耳に入ってきた
誰だ?
怪訝に思い、窓を開けてバルコニーに出た
夕焼けのパリの街が相変わらず美しかった
「ええ、菅原ですけど…」
「よかった、突然お電話してしまい
申し訳ありません。
私はカナリホールディングス、
商品企画課の松本と申します。
本社は以前、商品開発の際菅原様に
お手伝いを頂いていますが、今回も是非、
お力をお借りしたいと思い、
この様なご連絡させて頂いた旨でございまして…」
カナリホールディングス…俺が日本に帰ってから
最初に依頼があった製菓会社。
俺が提案、試作したチョコレートがどうやら
大好評だったらしいというのは後から
聞いたけれど…あの頃の俺は
そんなものはどうでもよかった。
「…急な話なもので即決できないですね。
俺もこっちで店もあるし…仮に日本に
行ったとして滞在期間はどれくらいになりますか?」
「そうですね…私共もなるべく早く商品を
開発したいので菅原様にお手伝い頂く期間は
多く見積もって2週間程かと思います」
2週間…長いな
遠くで扉を開ける音が聞こえた
エリックが帰ってきたんだ
「少し、考えさせてください。明日の朝までには答えを出すので」
「わかりました…私、個人としての
話なのですが、菅原様の作るチョコレートの
ファンです。なので今回菅原様と
本社を繋ぐ役割を頂いて、こうして菅原様と
お話できて大変光栄です。
どうか、良いお返事を期待していますね」
「あぁ、ありがとう…失礼します」
電話を切り、中に入る
「ただいま、シュン」
そう言いながらいつも通り俺の額に
キスを落とすエリック。
電話のことは絶対に聞いてこない
こいつはそういう奴だから
誰から?というのも聞かないから
理由を訪ねたことがある
そしたらエリックは
『君のことを信じてるから』
って、何食わぬ顔で言っていた
さっきの話は悪い話ではない、俺のスキル的にも
試せる、でもエリックが賛成するのか?
2週間は長すぎる
その間店はどうしようか?
悶々と考えながら、鍋を温め直すため、
俺はまたキッチンに入った
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