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【1話 / 喧騒】
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喧騒の町で、声を張り上げる。
「え、なに?」
ざわざわ、ガヤガヤ、この音はどんな擬音を使っても、言葉に表すことができない。
「お兄さん、身体改造って興味ない?」
相手も負けじと大きい声でこちらに問いかけ、俺のぽかんとした様子にしびれを切らしたのか、腕を引っ張って自分の方に引き寄せた。
押しつぶされるような人混みから抜けた俺たちは、目の前にあったコンビニに入った。
「…身体改造、って言ったの?」
「なんだあ、聞こえてたんだ、きょとんとしてるから、声、届いてないのかと思った」
成人雑誌をパラパラめくりながら屈託無く笑う彼とは、初対面だ。
「なんで?俺そんなことしてるふうに見えた?」
俺はどこにもピアスは開けていない。営業職に就いているのだから当たり前だ。
なのに、そんな俺に、身体改造だって?
「いや…したら、綺麗だろうなって思ったから」
対照的に彼は、両耳に大量のピアスと、眉間にも開いている。
「…はあ、俺のなにがわかんの?」
彼は俺よりずっと年下に見えた。
「なんもわかんないよ?」
手に持ったスマホを操作する音が微かに聞こえる。左手で雑誌を持ったままで、時折雑誌に載っている水着グラビアを眺めながら。
器用だな、と思いながら、場を持たせるためだけに質問する。
「何してんの?」
「ホテル探してる。ここから近いのどこだろ」
「…誰と?」
まさかと思ったが、その予感は的中していたようで、彼は俺を見上げた。決まってるじゃん?とでも言っているかのような表情。
このときこいつに背を向けて店を出てしまえば、俺の人生は180°変わっていただろう。
自分でさえそんなことをした理由はわからないが、なんのことはない、ただの好奇心だった。
「この辺、ホテルなんてどこにでもあるだろ。適当に歩いて安いとこ入ろ」
スマホを取り上げ、コンビニを出る。「ああっ」と情けない声を出して取り返そうとする彼の手を引いて。
店内の視線が俺たちに集まっているのがわかった。当然だ。真昼間から身体改造だのホテルだのの話をされればたまらないだろう。
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