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血だらけの幻蝶をソファーに座らせ、ぼんやり見つめていた
「見ているだけか?」
「自分でやったくせに」
「バレてた?」
「・・・・・・・・・・」
「ごめん」
「怒ってないよ、ただ」
「ん?」
「幻蝶の気持ちに気付いてあげられなかった」
「楓」
「親友以上の気持ちにはなれなかった・・・でもそれが幻蝶を傷付けていたんだね」
「ばーか!何深刻な顔をしてるんだよ」
「だけど」
「俺達の絆は愛よりも深いんだ、俺は恋人としてのお前を求めているわけでは無い」
「うん」
「翔を傷付けてどう思った?」
「別に」
「そっか」
そう言うと幻蝶は眠ってしまった
何故こんな事をしたんだろう
遊びにしてはリスクが高すぎでしょ?
それとも、俺の気持ちを探りたかったから?
だけど幻蝶はそんな駆け引きなんかしないはず
シャツに残っていた白い羽をそっと取り、床に落とした
苦痛に歪んだ顔が綺麗だった
全く抵抗しないなんてどMなのかな
まだあの場所にいるのだろうか?
どうでもいいけど少しだけ気になった
血だらけの体を起こし、ベンチに腰掛けた
全く手加減しなかった楓
俺の羽はボロボロでもう飛ぶ事すら出来ないだろう
「お前・・・どうしたんだ、その怪我!」
「何でもない」
「何でもない訳ないだろ?羽もボロボロじゃないか、野鳥にでも襲われたのか?」
「黒い鳥かもね」
「黒い鳥・・・まさか、楓が?」
「同情してくれるの?」
「こんな所にいたら違う奴に救急車を呼ばれるぞ」
「それは困るな」
「しょうがない、俺の家に」
「迷惑だからいい」
「いいから!」
「楓にばれたら葵が殺されるよ」
「その時は考えるさ、じっとしていろ」
「・・・・・・・・・・・・」
葵に抱き上げられた瞬間、涙が溢れた
「痛いのか?」
「違う、嬉しくて」
「別に友達になったわけじゃない、勘違いするな」
「うん」
だけど葵は言葉とは裏腹に優しく俺を運んでくれた
ずっと寂しかった
だから温もりが嬉しくて
「軽いな、天使って何か食ってるの?」
「お腹は空かないんだ」
「へぇ」
「座って」
「うん」
初めて来た葵の部屋は無駄な物が無い部屋だった
だけど居心地がいい暖かい部屋
「じゃ、まずは消毒するからな」
「ありがとう」
葵に手当をしてもらい、包帯だらけの体を見つめた
「しかし人間なら死ぬレベルだぞ、楓を怒らせたのか?」
「どうだろう」
「まぁいいや、ちなみに天使も眠らないの?」
「眠るよ」
「じゃ、少し眠れ」
「うん」
悪魔は眠らないけど天使は眠る
絶対必要ではないけれど、体を休ませなければいけない程ダメージを受けていた
ここは微かに楓の香りがした
目を閉じると切なさで胸が苦しくなった
「何も考えず眠れ」
「・・・・・・・・・・・」
「お前がどうしたいのかは知らないけどさ、このままだと楓に消されてしまうぞ?」
「それでもいい・・・そうして欲しい」
「もういいんじゃないか?お前は天国に行けよ」
「翼が無いのに?」
「あっ・・・ごめん」
「それにこうなった事には何が理由があるんじゃないかと思うんだ」
「理由ねぇ」
「うん」
「俺にはわからないな」
そう言って煙草に火をつけ、コーヒーを淹れていた
「甘いミルクでも飲め・・・飲めるか?」
「ありがとう」
白いカップを受け取り、暖かいミルクを一口飲んだ
甘くて美味しいミルクはボロボロの心に染み込んだ
「悪魔は食べないけど天使は食べれるんだな」
「うん」
「そして眠る」
「人間の時と差ほど変わらないみたい、痛みもあるしね・・・ただ違うのは時間が永遠だと言う事」
「そっか」
カップを両手で抱えながら溜息をついた
「天使と悪魔はどっちが強いんだろうな」
「わからない」
「ようするに悪か善かの違いだろ?」
「そうかもね」
「悪魔は強いイメージがあるけど、天使も強いと思うな」
「戦う事はしないし望まないから」
「だろうね」
葵との会話は何となく続いた
そしていつの間にか俺は眠ってしまった
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