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「嘘っ!」
公園が立ち入り禁止になっていたけど、俺はすんなり入る事が出来た
そして公園に敷き詰められた一面のダリアを見つめていた
「綺麗・・・」
楓は気に入ってくれるだろうか?
「雪・・・」
繭からもらったマフラーは暖かい
俺はあの日から色んな事を考えていた
そして決めたんだ
触れられなくてもいい
楓が傍にいればいいと
これも俺の我儘かもしれないけど、どうしてももう離れたくないんだ
「雪だるまかと思った」
「楓」
「驚いた・・・本当にやるとはね」
「実は、繭の所でバイトをしていたんだ」
「バイト?」
「バラの苗を植えたからダリアをもらえた」
「だから手が傷だらけに?」
「どうしても楓にプレゼントしたかったから」
「ありがとう、すごく嬉しいよ」
色とりどりのダリアの上に落ちる雪
落ちては消えていく儚い雪
俺達は距離を置いたままその景色を見つめていた
悲しいけど楓の為だから
「楓、愛してる」
「俺も愛してるよ・・・初めて会った日からずっと」
「でも俺は」
「本当に何て言えばいいんだろうね、罪を犯した意識がなくても罪は罪」
「俺はそれを裁く事は出来ないし、裁きたくもない」
「お互い死んでるしね」
「笑えないけどね」
「これは俺からのプレゼント」
そう言って俺に差し出したのは綺麗な細工の施されたナイフだった
「物騒な世の中だしね」
「すごく綺麗、ありがとう」
施された細工はクロスと羽が重なり合ったデザインだった
怪しく光る刃を見て、一瞬嫌な予感がした
「もし、生まれ変わる事が出来たら今度は綺麗な人生を歩みたいな」
「俺も、そして必ず楓と出会う」
「楽しみだけど、それは無理かもね」
「そうだね・・・でも俺は楓がいればそれでいい」
「もう一つ、プレゼントが欲しいな」
「えっ?」
「お願い」
「いいけど、何を・・・」
「ナイフを両手で握りしめていてね、もしかしたら御守りになるかも」
「わかった」
俺は言われた通りにナイフを両手で握りしめた
本当に御守りになると思って
「それでいい、翔・・・出会えて本当に幸せだった」
「楓っ、だめ!」
「大丈夫、じっとして」
楓は俺を抱きしめてくれた
本当に、ナイフが御守りに?
「愛していたよ、泣かないでね」
「どう言う・・・えっ?」
俺がナイフを握りしめていた手を持ち、自分の心臓に突き刺した
「どうしてっ!嫌だよ、楓っ!!」
「俺だけ消えてごめんね、でも翔には・・・幸せ・・・」
「嫌だ、俺も・・・嘘っ!」
楓の心臓は貫けたのに俺の心臓は貫けないなんて
そんな・・・そんな・・・・・
「いやだっ!楓ーーーー!」
ダリアの上に倒れ込む楓を抱きしめ叫び続けた
「見て・・・ほら・・・スノードームのような・・・雪」
「楓?楓!!」
楓は微笑みながら消えて行った
ダリアに吸い込まれるように静かに
「俺はどうしたら・・・」
こんな世界はいらない
楓のいない世界なんて意味が無い
消えてしまいたい
「翔」
「繭、こうなる事を知っていたんだね?」
「・・・・・・・・」
「どうしてっ・・・」
「これは僕が作り上げた世界だから全て知っていた」
「どう言う事?」
「世界は必ずしも一つとは限らない、翔達の生きて来た世界はこの手の中にあった」
「スノードーム」
「最初は単なる退屈しのぎのつもりだった、でもね一生懸命な翔を見ていたら気持ちが揺れた」
「ようするに、俺達は繭の遊び道具だったわけ?」
「最初はね」
「どう言う事だよ!じゃ、殺してよ!!」
「新しいスノードームを作った」
「意味が分からないよ」
「今度こそ本当にさようなら」
「・・・・・・・・・」
繭の手からゆっくりとスノードームが落ちて行った
俺達は最初からスノードームの中にいたんだ
本当に滑稽だ
地面に落ちて飛び散る破片を見つめ、俺はその場に倒れ込んだ
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