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デートコースというには足りないかもしれないが、俺と七海は不動産屋へ向かった。
今日は兼ねてからの予定通り、俺の新居を探すことにしていた。
条件は大学から近いことと、俺は部屋に書籍が多いからそれ用の部屋がほしい。
それと七海がいつ泊まりに来ても困らないように、それなりの広さも欲しい。
細かいことを上げればキリはないが、大まかにいうとそんなものだ。
二人で隣り合わせにカウンターに座り、提示された条件に合う資料を出してもらう。
担当者が席を外したのを見計らって、七海が俺を小突いてきた。
「みーちゃん、なんだか新婚さんみたいで嬉しいですっ」
「お、男同士の結婚は日本では認められていない。よって男同士で新婚などという言葉はおかし…」
「じゃあ認められてる国に行っていつか結婚式あげましょーね」
「……っ」
さらっとそんな事を言うな。
ぶわっと顔に熱が上がり、何も言葉が返せなくなってしまう。
七海は一体どこまで本気で言っているんだ。
結婚なんて話になれば、当然本人同士の問題だけではなくお互いの両親、家族も交えての話になる。
そういうことまで考えて発言をしているんだろうか。
「みーちゃん、みーちゃん。ここ浴室すっげー広いっすよ。お風呂エッチ捗りま…」
「公共の場で変なことを言うな」
どうやらそんなことまで考えての発言など絶対にしていないだろう。
それから戻ってきた担当者と話をし、ある程度物件を絞る。
案内のもと実際に物件を見に行き、七海とあれこれ話をしながら部屋選びをする。
きっと傍目には俺達の関係は兄弟…さすがに親子は勘弁してほしいが、もしくはルームシェアでも始める同居人くらいの印象だろう。
それでも七海と話し合って何かを決めるのは初めてで、非常に新鮮で楽しかった。
夕方になり結局お互いが気に入った場所は今の自分の家とそう変わらない間取りの部屋で、交通の便もいいことからそこに決めることにした。
必要な物もあるので本契約は後日改めてするとして、書類を貰って七海と不動産屋を出る。
「今日決めちゃって良かったんですか?他の場所も見なくて」
「いい。お前が気に入った場所がいいんだ」
「じゃあやっぱりあの浴室が大きい部屋に…」
「お前が本当にそこがいいならそこにする」
正直住む家など、七海が気に入りさえすればどこでもいい。
いつから俺はこんな風に思えるほど七海が主体になってしまったんだろう。
淡々と言った俺の言葉に、七海はくしゃりと笑顔を作る。
「俺のお嫁さん素直で可愛いです。あそこはやめましょう。キッチン狭かったんで台所エッチが捗らないです」
「…お前の部屋選びの基準はそこなのか」
「大事なことですから」
相変わらずの性欲バカだが、好かれているからこそかと思えば嫌な気などしない。
それから二人で電車に乗り、駅ビル内のモールを少し見て回る。
目的なく見て回る買い物などそんな非効率なこと普段は絶対にしないが、七海が隣であれこれ言っている姿を見ながら歩くのは嫌いじゃない。
久しぶりにゆっくり隣にいてくれることに、もうずっとふわふわした気持ちで七海について回る。
「そういえば欲しいものがあるんじゃないのか」
「えっ?特に無いっすけど。そんなこと言いましたっけ」
「違うのか。欲しいものがあれば何でも買ってやるが」
七海が喜んでくれるなら何でもしてやりたい。
もっと喜んでほしくて言った言葉だったが、じとっとした視線が落ちてきた。
なぜだ。
「…みーちゃん絶対キャバとかこの先行っちゃダメですよ。ハマったら貢ぐタイプな気がしてきました」
「なんだそれは」
「それよりお腹空いたんで帰りましょう。みーちゃんのご飯が食べたいです」
気付けばあっという間に時間は経っていた。
楽しい時間というのは本当に瞬く間に過ぎてしまう。
ぼーっと七海を見ている間に気付けば時間が過ぎてしまった気さえする。
ドキドキと速い鼓動のせいで全く腹も減っていないが、七海のリクエスト通り家に帰り飯を作ってやることにする。
電車を降り駅を出たらすっかり暗い夜道で、七海がすぐに俺の手を繋いできた。
バクリと大きく心臓が跳ね、触れられたところから頭の天辺まで浮かされるような熱が込み上げてくる。
頭が真っ白になりながら俯いて隣を歩く。
どうしよう、好きだ。
本当に好きで堪らない。
「みーちゃん、好きです」
帰ったら玄関先で抱きしめられ、啄むようなキスをされる。
もう完全に頭がショートしていて、目眩すら覚えてしまう。
七海が耳や頬に口付けてくるのを、ひたすらに身体を強張らせて耐える。
デカい心臓の音がもう耳のすぐ近くで聞こえている気がする。
きっと今日は間違いなく七海に抱かれるんだろうし、そう思えば余計に意識をしてしまう。
これからするのか。
それともまだしないのか。
ガッチガチに身体を強張らせていたら、七海がクスリと笑った。
「ふ、正直可愛すぎて今すぐ食べちゃいたいんですけど、今日はみーちゃんにしてほしいことがあるんで。後に取っておきますね」
ぼーっとその言葉を聞いていたが、数秒遅れて頭に入ってくる。
してほしい事とは一体なんだ。
金でも勉強でも相談でも俺に出来ることなら何でもしてやるつもりだ。
が、ニッコリと俺に笑顔を向けた七海の表情は、完全に嫌な予感のする方だった。
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