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学校に行ったものの授業はつまらないし、正直家で適当に教科書読んでた方が割と頭に入ってくる。
俺の席は窓際だから眠るのには最適だったことが幸いだ。
昼になれば屋上で静かに昼飯を適当に済ませてあとは昼寝に費やす。千冴ととることも多いがその度に「よくそんなに寝てられるよな〜でもお前テストの点はいいからほんとムカつく」と文句を言われるのが常だ。
今日も今日とて静かに学校生活を終えた。
とくに部活にも入っていないからそそくさと下駄箱へ向かうと千冴が追いかけて来た。
「お前部活は?」
「今日顧問が出張でいないから休みになった!どーせお前また寄り道して帰るんだろ?付き合ってもいいぜ?」
「お好きにどーぞ」
俺たちは駅前のゲーセンとカラオケで放課後を過ごした。
千冴はサッカー部の練習が忙しいからしょっちゅう遊べるわけではないし、別に仲が悪いわけではないが他のクラスメイトと付き合うのは少し面倒くさいから最近はもっぱらネカフェだった。
久しぶりの千冴との放課後は結構楽しかった。
「んじゃ、また明日な。遅刻すんなよ、非行少年!」
「うるせーよ、サッカー馬鹿」
千冴と別れるころには22時を回っていた。
千冴は親にメールか電話をしていたと思うが、俺は別に心配されるようなこともないからいつも通りなんの連絡もしなかった。
夕飯は千冴と食べたが、少し物足りなかったから途中でコンビニによった。夜食か何か買おうと思ったが新作のアイスに目が止まった。俺は結構こういうものに弱い。
昔は創矢と違う味の物を買って一緒に分けあって食べたりもした。
「…買ってくか」
気まぐれで創矢の分も買ってみた。
家の外から創矢の部屋だけ光っているのが見えた。
創矢が真面目なところは変わっていない。一応ある門限までには帰るし、成績も優秀、ずっと続けている剣道の腕も確かだ。中学にも創矢の名前はよく出てくる。あいつは中学で生徒会長をやっていたからちょっとした有名人なのだ。お陰で俺が比べられるがどーでもいい。
二階に上がって創矢の部屋のドアを叩いた。
するとパジャマのボタンをしっかり止めて寝る準備万端の姿で創矢が出て来た。
「…今何時だと思ってるんだ。お前も早く寝ろ」
「まだ23時にもなってねえじゃん。真面目すぎだろ」
「…。用件はなんだ」
迷惑そうな顔で話す創矢にムカついて買ってきたアイスを投げつけた。
「っるせーな。いちいち怒ってんじゃねえよ」
「なんでお前がキレるんだ」
「食って死ね」
「え」
一瞬創矢は驚いた顔をしていたが御構い無しに自分の部屋に入ってドアをわざとでかい音を立てて締めた。
ムカついてベッドにそのまま寝転んでいると10分ほどしてからノックとともに
「礼、さっきは…悪かった。俺も渡すものがあるから出て来てくれ」
このまま出ないのも大人気ないと思いドアをゆっくり開けると創矢がいつもより少し柔らかい顔で、昔のような表情で立っていた。
「おいしかった。夜に食べるのはどうかと思ったけど…」
ここでも真面目だった。
「お返しに、これ。お前この映画気になってただろ。この間チケット貰ったけど行けなかったからやるよ」
創矢は俺を無視しているようで意外と見ているのだと感じた。昔から周りへの気配りが良くできる性格だった。
「じゃ。おやすみ」
こんなにふつうに話したのはいつぶりだっただろう。
驚きと嬉しさでありがとうと言い忘れた俺が創矢の名前を呼んだ時だった。
「ん?」
「…!?」
「どうした」
「あ、いや、ありがと」
「うん」
こちらを振り返った時に見えた、あの首筋の跡。
「…キスマーク…だったよな」
あいつに彼女がいるなんて想像できないし、居たとしてあんなところに跡が残るほどの関係を持っている相手はどこの誰なのか。まさかこのチケットは彼女と。
創矢が自室に戻ってからも俺はその場から動けないでいた。
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