アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
34
-
ここは城の中にある庭。
以前、母と花かんむりを作り、あのワンピースを着ていた…初めてフィオリの微笑みを見た、あの、場所。
さわさわと風が吹き、テラス席に座るサランは、不思議な気持ちを胸に手を当てることで抑えていた。
「あのときは、まだ、子どもたちは生まれていませんでしたものね…とても、不思議です…」
サランの髪がさらりと揺れる。
テラスの屋根が作る日陰は涼やかで、晴天だというのに心地よい。
「サラン」
「はい、王様。なんでもお答えします」
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「ききたいことが、たくさんある。
サランも、あるだろう?」
「はい」
料理の乗ったテーブルを挟み、座ったまま向き合う2人。
今レミルは席を外し、芝生を走り回る子どもたちを見守っている。
「そうだな…では順番に質問し、応答していこう」
「はいっ。ふふふ、楽しそうですね」
「…ああ」
「では、王様からどうぞ」
「サラン、待て。ちょうどここに果物も、料理も並んでいる。応答するものは質問するものに一口食事させよう」
「で、では…わたしから、王様に?」
「ああ。サラン、我の口に」
「はい…」
皮をむいて、ぶどうを1つ、フィオリの唇に運ぶ。
(無意識に、わたしの好きなものを選んでしまいました…王様は…わたしなどが触れたものを口に入れるのでしょうか…)
形の良い唇。ぶどうが近づくとゆっくり開かれた。
ちらりと覗く舌は赤く、とても官能的な食事シーンだったと思う。(うう、目が離せませんでした…。)
(それに、食べてもらえました…)
「ふふ、なぜそんなに頬を染めているんだサラン。
何も恥ずかしがることはないだろう?」
「で、でも、恥ずかしい…」
ぱっと手を膝に置き、下を向くサラン。顔は真っ赤だ。
「…ああ。……」
そんな愛おしい反応をされると思わず不意をつかれた王もしばし沈黙した。
「サラン、では、質問しよう。まずはじめに、子供を産んでくれて有難う。…子供の名前を教えてくれるか?」
「はい、エルディオとティラシュアです」
「そうか…サランが用意していた命名書は、ソアの古代語でかいてあっただろう。そのためエル、ティラ…までしかわからなかったのだ。
レミルが一度、サランの口から名を聞いたと言うが
ハーシュッドではあまり使わない名だったため一度で分からなかったらしい。
そうか…良い名だな」
次はサランだ。と、小粒の果物を口に入れられた。
口に果実を含んだというのに、フィオリの指はなかなかサランの唇から離れない。
むにむに、とサランの唇にを押して楽しんでいるようだ。
「んっ、甘酸っぱい、です…美味しい…」
そっと指が唇から離れたことを確認して、ずっと聞きたかったことを。
「なぜ、フィオリ様たちは、古代語をお話になるのですか?今は…普通にお話ししてくださるのに」
「ああ。顔合わせの時は、儀式の所以だ。
だが、その当時はサランをよく思っていなかったからな、意地の悪い嫌がらせをしていたのだ。すまなかったな」
前髪を持ち上げられ、ちゅっと、テーブルを乗り越えた王から額にキスされる。
恥ずかしくなって動揺してしまう…
(今まで、は、このように優しくしていただけるとは思っていませんでしたもの)
ストン、と座ったフィオリは再び口を開いた。
サランは迷った挙句、先程自分が食べた果物をフィオリの口に運ぼうとする、が。
「あっ」
小さすぎて果実はコロッと転がってしまった。
それも、体調管理するために長袖を着ていたサランの服の中に。
「貸せ」
服ごと手首を握られ、手のひらに口をつけた。すると、コロコロと転がってきた果実がフィオリの口内へ。
「ひぅっ」
驚いてしまい、席を少し立ち上がる。
(どうして王様は、わたしの心を騒がせるのですか、と、とっても緊張してしまいます…こんなこと、誰にもされたことなどありません…それに、こんなに心の臓が音を立てることも、ありませんでしたのに)
「ん。食べた。我の番だ…な?」
「は、はい…」
(ドキドキと…止まりません…一体どうしたら…)
「…サラン。先程、ハーシュッド国の古代語で話したな。
どうして知っているんだ?」
相槌を打つ。
「…えっと、辞書を頼りに…あ、あとは、お世話がかりの方々の会話を耳にして少しだけ、覚えました…。
まだまだわからないことが多くて、先程のアーサー様との会話もほとんどわかりませんでしたが…」
王は、俯いて話すサランに感心する。
「そうか…サラン、それは努力の賜物だ。よく、頑張ったな。だが、これからは儀式など文化を重んじる行事以外はなるべく共通語を話そう。サランと言葉の壁を隔てることなく過ごせるはずだろう」
「ありがとう、ございます。もったいないお言葉です」
まさか褒められるとは思わなかったため、サランは嬉しくてにこにこと笑う。
王も、それにつられるように微笑む。
遠くから眺めていたらしいレミルはその光景を見て、つい自分も微笑んだとのちに話した。
しかし、今日に会話ができたのはここまで。
少しずつ目が閉じていき、サランは眠ってしまった。
いまでは王の腕に横抱きにされている。
「サラン。無理をさせたな」
寝ているサランの額にキスを落としてフィオリは歩き出した。
「エルディオ、ティラシュア」
先程知った、我が子の名を呼んで。
まだまだサランに聞きたいことは多くある。
けれど、今はこのペースで物事を進めて行けばいい。
かつてないほどの余裕がフィオリを落ち着かせる。
普段、国王として責任ある多忙な生活を送っていたフィオリがこの平穏に不快を感じないのはサランの影響だとしか言えないだろう。
「王よ。聞きたかった謎は解けましたか?」
「ああ、2つだけ。
レミル、この様子ではサランは明日には目覚めるだろう。それまで我は庶務をする。そこで、これからの計画を立てたいのだが…」
「ギャウー?」「キューン?」
なーに?と言うようにフィオリの足元に現れたのは2匹の息子。フィオリに向かって座っている。
「ティラシュア、エルディオ…我に返事をしたのか?」
思えば自分は2匹の名を呼んだ。
けれど、用があると言うよりはサランの付けた名を、
我が息子の名前を呼びたかっただけであった。それなのにこの子どもたちはなんとも賢いようだ。
「ギャウ」「キュン」
「…ふっ、そうか。いい返事だ。これからのことでお前たちにも協力してもらおう。
今日のお前たちの仕事は母親の添い寝だ。わかったか?」
「ギャウ!」「キャウ!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 85