アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
45
-
子育てをしてみる、とは言ったものの、やはりサランにも正しい子育てとは何かがわからない。
「ふぅ、どうしたら良いのでしょうか…」
庭師の作業を見つつ、芝の上を駆け回る2匹について考える。
そもそも、子どものうちに自立しているならば自分の役目など無いのではないか。今もこうしてつかまり立ちなど関係なしに走っている。
なにも手伝ってあげることはないのかもしれない…
「ギャウー」「キャー」
生まれて半年だ。言葉を話せるわけでもない。
本当に、どうしたらよいのだろう。
サランは不安になっていた。
自分が眠っている間にこの子たちは自分がいなくても成長した。もう、自分は不要なのだと思う。むしろ、乳を与えて生きがいを持っていたのは自分だけで…。
王様は任せてくれたけど、本当は国の統治に自分が要らなかっただけで、子どもの世話を任せたのではないか…
ぐるぐると考えても答えが出ない。
庭師が花や草をパチン、パチンとハサミで切っていく。
整えられた庭はとても綺麗だ。
「王妃様」
庭師が麦わら帽子を少し持ち上げてこちらに近寄った。
「あ、はい。何でしょう?」
ずっと眩しい空の下働いていたためか、額に汗を流している男性。優しい、しわしわの顔。太ったお腹。髪や髭が真っ白な。
「王妃様、どうぞお花です。もしよかったら生けてくださいませんか?」
手渡されたのは先程刈られた花々。
白や桃色の可愛い花がある。
「まあ、とってもいい匂い…どうもありがとう…お部屋に飾ってみます」
サランが返事をすると
ぺこりとお辞儀した後、庭師はまた作業へ戻っていった。
後ほど聞いたことだが、毎日この城の外観を保つ仕事をしているのは3人いるらしい。そのうちの最年長の庭師と会話していたようだ。
(もしかして、私が暗い顔をしていたから気にかけてくださったのかもしれないですね…気をつけないと)
ティラシュアとエルディオは母が花を手に持ってにこにこしている姿を見て、あのおじさんに興味を持ったのか、
付いて行った。
「あっ、ティラ、エル、お仕事の邪魔はしてはいけませんよ。お部屋に行きましょう」
「ははは、構いませんよ。王子様はこの花が気になるんですかね」
「ギャウ」「キャウ」
「ふ、2人ともっ…」
サランはいつもは素直な子どもが言うことを聞かないことに戸惑う。
(どうして言うことを聞いてくれないの?)
(本当に迷惑をかけてしまう…)
「ティラッ!エルッ!何度言ったらわかるのですか!こちらにいらっしゃい!!」
「ガオ!?」「キャウ!?」
普段は声を荒げたことがないサランが叫んだ。これには2匹も驚いたようで、小さな尻尾をさらに小さく縮こませる。
「…あっ…」
サランも大きな声を出してしまったことに罪悪感を感じる。でも、じゃあ、どうしたら良かったのだろう。
わからない。
わからない。
子どもたちは庭師の足元で立ち止まってしまった。
怖がってこちらに来ない。
(わ、わたしのせい、ですよね…)
「ご、ごめんなさい…2人とも、こちらに…おいで」
違う。そうじゃない。怖がらせたかったのではない…。
怒りたかったわけじゃあ、ないのに。
それなのに…
なのに、わたしが涙が出そうだ。
(1人になりたい…落ち着きたい、…子どもに謝りたい…
今はいつもみたいに笑えない…泣きたい…1人になりたい…でも約束したから…子どもたちといないといけない…
嫌だ…)
(…いや、だ?)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
45 / 85