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フィオリがこの場にいる者全てを見渡す。フィオリと親交の深い獣族10名はバラバラに、けれど皆フィオリに向かって立っており、昨晩サランに手を出した1名だけが床に這いつくばっていた。
「何か言うことは」
「っ、クソ…!」
他の者たちはある程度察しが付いているようで余計な反感を買わないためにも沈黙を守っている。
「あんただけ、…いつもそうだった!仲間が死んでいく時も、あんただけは、魔力が残っていた!!あの戦争を忘れたとは言わせない!!!」
昨晩サランたちに手をあげたドンが声を荒げる。獣族の1人で、代々子を成し繁殖してきたために、今では魔力が減り獣化できない一族の1人でもある。
「それがどうした。
我のモノに手を出す理由と関係でもあるのか?」
静かな怒りはそのままに、しかし、フッと馬鹿にするような笑みを浮かべたフィオリに対してドンは頭に血が上ったようでわなわなと震え出す。
「〜〜っ!き、貴様ぁあ!!!」
血を垂らしながらもフィオリに向かって暴行を働こうと立ち上がる。
バチバチバチッ!
早口に魔術を唱え雷の槍をフィオリに向かって飛ばす。これはドンの得意とする雷魔法だ。勢いよく稲妻がフィオリの頬を掠めるが、当の本人はソファに身を預けたまま不適の笑みを見せる。
その稲妻はフィオリの背後にある大理石の壁を貫き、焼き焦げた跡を残した。
「的は動いてもないぞ?ドン」
「うるせえ!!一発で殺してやるものか!
じっくり苦しめばいい!!!」
大きく腕を振り上げ、また魔法を出そうとするドン。
しかしそれは叶わなかった。
「およしなさい、ドン」
「ぐはっ!!」
「ユラシア…貴様!」
腕を背にまとめられ、身動きできぬように踏まれていることが屈辱だったのかドンがユラシアを睨みつけるが、顔面を床に強打されたことでドンは静まった。
「フィオリ…数々の非礼を許してくれ…こいつは私が我が国で処罰しよう…どうかサラン様と、御子との時間を…こいつのために割かないで欲しく思う。どうだろう」
「……ああ。わかった。ユラシアに任せよう」
「ああ」
「ドンだけではない…不可侵を犯した者は罰する。それが我らの誇りと罪だ」
「ええ、その通り」
「わかってるよ」
「はい、もちろん」
「ドンが馬鹿だっただけよ。私たちは皆同胞」
「掟破りは罰する。誇りにかけて」
「誇りにかけて、約束は守る」
「フィオリ、ドンの言ったことを気にしすぎてはいけないよ?誇りを失った者の言うことは…ね」
「そうですとも」
「条約違反などするものか。もちろんだ」
「そうですわ。皆で平和を続けましょう」
「…ああ。話が分かったならばこれまで。今回はよくぞ足を運んでくれた。これにて解散だ」
「ふふ、嫌だなあフィオリ様、堅苦しい話はここまで。
本来私たちが集まる理由はただ一つでしょう」
「…?」
「あなたを祝福しに参じたに決まっているでしょう?わざわざ手紙まで書いていただいたのですから」
「そうそう、今時石碑じゃなくて手紙なんてよぉ、驚いたぜフィオリ…それに、お前祝われ慣れしていないんだな」
「フィオリ様、皆あなたと話したくて今日いるのですよ」
「そうですぞ、フィオリ様…あなたの花嫁や子どもたちの話を聞かせてくだされ」
「そうだともフィオリ。ここにいるのは旧友だ。皆お前と話したいに決まっている。さあ、もう一度話し合おう」
ユリシアが部屋の外に待たせていた従者にドンを預け、部屋の中に戻りながら笑顔で皆に続く。
「…ああ、そうだったな。
ふっ…では、我の自慢話でも聞いてもらおうか?」
フィオリは肩の力を抜いて旧友たちと語り合った。
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