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「私もお尋ねしたいことがあります」
「ああ」
「あの子たちはフィオリ様のように獣の姿にもなりますが、獣族というのは皆さんなるものなのですか?」
アーサーは自分で獣化できると言った。
レミルはどうなのだろう、それに結婚式に参加したのは皆獣族と聞いていたのだが…
「ああ…この城内ではアーサー、レミル、子どもたちも獣化できる。
だが、世界全体として見た時、
獣族といっても魔力が少なく獣化も魔法もできない奴が今ではほとんどだ。
この国にも獣族は他にいた…
もう魔力がないため一般人というようになったがな」
「ハーシュッド国に、いたのですか…獣化できる人が…
フィオリ様たちだけではなく…」
サランは驚いた。自分の無知さにも驚いた。
生まれてきて一度も獣族という名を聞いたことがなかったのに、ここに来てからというもの、人間と獣の姿に変化できる人種がいたり、それが国王フィオリであったり、魔法が存在したり、この国や昔はもっと魔力を持った人間がいたというではないか。
「以前、魔力がなくなった臣下を解雇したとお話しされましたが、もとは獣族の方々だったのですね…」
「あいつらの魔力がなくなったのは100年以上前のことだ。魔力がなければ獣化できないからな」
「ひゃ、100年?フィオリ様は……えっと…」
「我は齢300だが」
「???!」
サランが頭を抱える様子にフィオリは不思議がる。
夫婦となるために、これくらいは知ったうえで結婚を受け入れたと思っていたのだ。
「…サラン…知らないまま嫁いだのか?」
「はい……お恥ずかしいです…」
それならば混乱もするだろう…
そう考え、フィオリはようやく合点がいった。
サランが森で大きな獣に会った時、あれをフィオリだと認識できなかったのは、魔法や獣化という知識がなかったからだということに。
(獣族という存在を知っていれば、誰かを特定できなくとも獣化した誰かだと判断できるしな)
ハーシュッド国の隣の国には、魔法や獣化についての知識がある。
しかし、ここから遠く離れたソア国では知られていなかったようだ。
納得しかけたその時、フィオリはふと考え込む。
(だがしかし…普通、あんな大きな動物に違和感を覚えるものではないのか…?ソアの国にいる動物であのサイズが当たり前なのか…??)
「…フィオリ様の年齢は、その、お若いのでしょうか?300歳というのは、想像がつかなくて」
フィオリがソア国について考えていると、サランからフィオリについて質問をされた。
「…周りからは若造だと言われるが…。
人間ではありえない年齢でサランも驚いただろう」
「はい、とても驚いています。…お若いの、ですね…」
混乱するサランに追い討ちをかけるようで悪いが、更に知ってもらうべくフィオリは話を進めていく。
「我ら獣族は今世界で見ると人口の2%と考えられている。激減だな。実際に魔力があって獣化できる人物はそうそういないのが現状だ」
「…どうして獣族は減っているのですか?
魔力があり、お強く地位が高い方々ですよね…」
「そうだな。世には力の強いものが残る…
しかし、我らには大きな欠点があるのだ。それは繁殖能力が極めて低いことだ」
「繁殖…?」
「子を成すことだ」
サランの耳元まで屈み、フィオリはそっと教える。
「っ!」
ビクつき、慌てるサラン。
「獣族は魔力が強く精力も強い。だから、夫婦の営みに耐えられない場合が多い。……もし腹に子を宿したとしてもその子の魔力により母子共に無事にいられないことがあるのだ」
フィオリにそう言われてサランはあることに気付く。
言葉を濁してではあるが、フィオリたちが、自身に母親はいない、というようなことを言っていなかっただろうか。
『獣化できる我らは本来母親の乳を飲むことなどないのだ。このように、あるものはなんでも食べる』
『えっ?!チビたち、お姫さまの乳吸いをしていたと言うの?!』
『我たちは母親が…いや、他の者が世話をして育てるという習慣があった。だから乳をもらったことがない。』
サランの腰にフィオリの腕が回り、そっと顎を指で上向かせられる。
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